医療・健康

肥満がインスリン分泌細胞の機能を低下させる仕組みを解明

研究イメージ画像 (Image by UGREEN 3S/Shutterstock)

 肥満はさまざまな臓器の機能を低下させることが知られています。インスリン分泌を行う膵β細胞もその一つで、肥満により機能が低下し、糖尿病発症をもたらします。本研究では、その仕組みとして、代謝産物センサー分子CtBP2タンパク質が肥満病態で分解されてしまうことを、明らかにしました。

 肥満は糖尿病、脂肪肝、動脈硬化といったメタボリックシンドローム関連疾患の発症に強い影響を及ぼします。また、がん、精神疾患、免疫機能など、代謝とは関連が少ないように見える疾患にも大きな影響を与えます。こうした幅広い病気の理解や治療法の開発には、肥満の病態でさまざまな臓器や細胞の機能が低下する仕組みを解明することが重要です。


 インスリンを分泌する膵β細胞も、肥満の経過で機能が低下することが知られています。インスリン分泌の低下は血糖値を保つことができなくなることから糖尿病の発症に強く関わっています。しかしながら、そのメカニズムの検証においては、膵β細胞特有のメカニズムの同定が多く、肥満病態において全身に共通してみられる責任因子の同定は限られていました。肥満病態での共通項が分かれば、治療法の開発も容易になります。


 本研究グループは、従来から、代謝産物の質や量を感知するセンサー分子CtBP2タンパク質の肥満や代謝での役割に注目してきました。今回、肥満によって膵β細胞に生じる酸化ストレスによってCtBP2タンパク質が壊されてしまうこと、それによって膵β細胞の機能が維持できなくなり、インスリン分泌低下や糖尿病をもたらすこと、を明らかにしました。


 本研究成果は、これまでの研究と合わせて、CtBP2が肥満で機能しなくなることが、メタボリックシンドロームの発症やその病態に重要な役割を果たしていることを示しており、肥満に関連する疾患治療への応用が期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
島野 仁 教授
関谷 元博 准教授


掲載論文

【題名】
Loss of CtBP2 may be a mechanistic link between metabolic derangements and the progressive impairment of pancreatic β-cell function.
(CtBP2の喪失は代謝異常とβ細胞機能障害の進展をつなぐ分子となり得る)
【掲載誌】
Cell Reports
【DOI】
10.1016/j.celrep.2023.112914

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