医療・健康

ナチュラルキラー細胞のウイルス感染への免疫記憶を制御する分子を発見

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(Image by Numstocker/Shutterstock)
 ウイルス感染細胞を殺す重要な免疫細胞の一つであるナチュラルキラー(NK)細胞について、その細胞質内に存在するThemis2という分子が、ウイルス抗原を記憶し、より強力な殺傷能力を持つ免疫記憶NK細胞への分化と、その機能を制御していることを発見しました。

 人類の歴史において、ウイルス感染症は、ヒトの生命を脅かす最も重大な病気の一つであり続けています。ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルス感染細胞を殺す役割を持つ免疫細胞ですが、体内に一度侵入したウイルスを記憶して長い間体の中で生存し、ウイルスが再度侵入した際に強力に殺傷できる免疫記憶NK細胞に分化することはできないと、これまで考えられてきました。最近、この定説に反して、NK細胞にもウイルス抗原を記憶する能力があり、より強力な殺傷能力を持つ免疫記憶NK細胞に分化することが分かってきました。しかし、そのメカニズムについては、まだ十分に解明されていませんでした。


 本研究では、NK細胞の細胞質内に存在するThemis2という分子が、免疫記憶NK細胞への分化とその機能を制御することを発見しました。Themis2を欠損したNK細胞は、野生型NK細胞に比べて、サイトメガロウイルス感染後に免疫記憶NK細胞により効率良く分化でき、また、Themis2を欠損した免疫記憶NK細胞は、サイトメガロウイルス感染細胞をより強力に殺すことも分かりました。


 本研究により、Themis2を標的として免疫記憶NK細胞の分化や機能を強化することによる、新しいウイルス感染症治療薬を開発できる可能性が示されました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
澁谷 彰 教授

筑波大学生存ダイナミクス研究センター
鍋倉 宰 助教


掲載論文

【題名】
Themis2 regulates natural killer cell memory function and formation
(Themis2はナチュラルキラー細胞記憶の機能と形成を制御する)
【掲載誌】
Nature Communications
【DOI】
10.1038/s41467-023-42578-8

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