医療・健康

脳腫瘍治療薬の早期臨床試験における有効性評価基準設定の困難さを解明

研究イメージ画像
(Image by create jobs 51/Shutterstock)
 脳腫瘍を対象とした治療薬の臨床試験では、他の固形がんと異なり、特に早期の試験では複雑な評価が必要で、適切な有効性評価の基準に関してコンセンサスが得られていません。本研究では、その現状を分析するとともに、腫瘍の種類に応じた画像評価基準の利用も不可欠であることを明らかにしました。

 がん治療薬の臨床試験(治験)には、製造販売の前に、第Ⅰ〜Ⅲ相の3段階があり、それぞれ評価項目が異なります。しかしながら、特に脳腫瘍では、特有のバイオマーカーや複雑な評価が必要であることから、他の固形がんと比べて早期臨床試験の評価基準の適切性が不明確で、コンセンサスは得られていません。


 本研究では、近年の脳腫瘍を対象とした第I相試験に用いられている評価指標を分析しました。その結果、ORR(奏功割合)、PFS(無増悪生存期間)、OS(全生存期間)など複数の有効性エンドポイント(評価指標)が探索的に評価されていることが分かりました。また、脳腫瘍だけでなく他の固形がんを含む第Ⅰ相試験コホートでは、RECIST(固形がんの治療効果判定基準)の使用頻度が高いことが統計的に示されました。これらのことから、脳腫瘍の早期試験における有効性評価は、他の固形がんとは異なる困難さがあり、多元的な評価基準を用いる必要があることと、詳細な予後データの蓄積が重要であることが明らかになりました。今後さらに、さまざまなデータベース情報を使用して、早期試験における有効性エンドポイントに関する情報を分析し、WHO脳腫瘍ガイドラインに基づく証拠を蓄積する必要があると考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
渡邉 真哉 講師

掲載論文

【題名】
Recent status of Phase I clinical trials for brain tumors: a regulatory science study of exploratory efficacy endpoints
(近年の脳腫瘍を対象にした第Ⅰ相臨床試験における探索的有効性エンドポイントに関するレギュラトリーサイエンス研究)
【掲載誌】
Therapeutic Innovation & Regulatory Science
【DOI】
10.1007/s43441-024-00644-3

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