医療・健康

キック泳では泳ぐスピードの違いで足部周りの渦の構造が変化する

研究イメージ画像
(Image by KOTOIMAGES/Shutterstock)
 水中ドルフィンキック動作において前進するスピードを増大させていくと、泳者の足部周りに生成される渦の構造が変化することを発見しました。特に、2つの渦によって誘発されるジェット流の向きが、より鉛直下向きへと変化しており、これが身体を前進させることに貢献していると考えられます。

 ヒトがキック泳で水中を進む際には、足の周りに渦が生成され、それが身体を前に進めるための力となります。しかしながら、泳ぐスピードが異なる場合、足の周りに生成される渦の構造がどのように変化しているのかはこれまで不明でした。そこで本研究では、スイマーの動作を光学式モーションキャプチャシステムを用いて分析するとともに、水の流れの変化を可視化するための粒子画像流速計測法により、泳ぐスピードの変化に伴う渦の構造の変化を調べました。

 その結果、水中ドルフィンキックの下肢動作において、泳ぐスピードが上がるにつれて蹴り下ろし動作から蹴り上げ動作に移行する局面の渦の構造が変化していることが分かりました。具体的には、泳ぐスピードが上がるにつれて、足の周りに生成される2つの渦の間に生じるジェット流の向きがより鉛直下向きへと変化しました。この変化は、蹴り上げ動作で身体を前に進めることに貢献していると考えられます。

 本研究は、キック泳中の泳ぐスピードを変化させた際の渦の構造の変化を観察した初めての研究であり、指導者や選手が水中ドルフィンキックの技術を改善する上での科学的根拠を提供することに加え、ヒトが水中を進むメカニズムの解明につながると期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学体育系
角川 隆明 助教

新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科
下門 洋文 准教授

明治大学理工学部機械工学科
榊原 潤 教授

掲載論文

【題名】
Variations in vortex structure with changes in swimming velocity during human underwater undulatory swimming
(ヒトの水中うねり泳における泳速度の変化に伴う渦構造の変化)
【掲載誌】
Experiments in Fluids
【DOI】
10.1007/s00348-025-03955-9

関連リンク

体育系