日本の乳がんサバイバーにおけるがん以外の病気の危険性を明らかに

乳がんは日本人女性に最も身近ながんですが、乳がんサバイバーにおけるがん以外の病気の発症しやすさは十分に研究されていませんでした。本研究では医療レセプトデータを解析し、女性乳がんサバイバーが同年齢の一般女性と比べ、どのような病気をいつどれくらい発症しやすいかを解明しました。
乳がんは日本人女性に生じるがんの第1位で、9人に1人がかかるとされています。近年は早期発見や治療の向上により、乳がんにかかった女性が長生きできるようになっていますが、乳がんサバイバーが健康的に長生きするには、乳がん自体の治療・経過観察だけでなく、乳がん以外の健康状態にも注意する必要性が欧米の研究から示唆されていました。しかし、日本人を含むアジア人において、乳がんサバイバーのさまざまな病気の危険性(リスク)は十分に検討されていませんでした。
本研究では、株式会社JMDCが全国の健康保険組合から収集している医療レセプトデータ(匿名加工情報)を解析し、乳がんサバイバーが、同年齢の一般女性と比較して、がん以外の12種類の代表的な病気(心筋梗塞、心不全、心房細動、脳梗塞、脳出血、肺塞栓症、骨粗鬆症性の骨折、その他の骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、うつ・不安)にかかるリスクがどの程度異なるかを明らかにしました。
2万4017人の乳がんサバイバー(平均年齢50.5歳)と9万6068人の同年齢の一般女性を比較した結果、乳がんサバイバーは、心不全、心房細動、骨粗鬆症性の骨折、その他の骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、うつ・不安にかかるリスクが一般女性に比べ高いことが明らかになりました。また、これらの病気の多くは乳がんの診断から比較的早期(1年以内)に発症するリスクが高い一方、骨折については時間が経ってから発症するリスクが上昇することが示されました。
本研究により、日本の乳がんサバイバーが健康的に長生きするためには、乳がん以外の病気の予防や早期発見・治療にも目を向けることが重要であると示唆されました。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学 医学医療系/社会医学グループ デジタルヘルス分野・ヘルスサービスリサーチ分野岩上 将夫 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Non-cancer risks among female breast cancer survivors: a matched cohort study in Japan
(女性乳がんサバイバーにおけるがん以外のリスク:日本におけるマッチドコホート研究) - 【掲載誌】
- The Lancet Regional Health - Western Pacific
- 【DOI】
- 10.1016/j.lanwpc.2025.101519
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