医療・健康

プライマリケアで「低価値医療・無価値医療」を提供する医師の特徴を分析

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(Image by Fahroni/Shutterstock)
 プライマリケアにおける「低価値医療・無価値医療」の提供実態を分析しました。その結果、こうした医療の大部分は一部の医師によって提供されており、特に年齢が高い、専門医資格がない、患者数が多い、などの特徴がある医師ほど、その傾向が強いことが分かりました。

 「低価値医療・無価値医療」とは、患者にほとんど、または全く健康改善効果をもたらさない医療を指します。こうした医療を減らすことで、過剰な検査や治療を防ぎ、不要な医療費を抑制し、医療資源(財源や人材)をより有効な医療サービスに振り分けることができます。しかし、どのような医師が低価値医療・無価値医療を提供する傾向があるのかについては、これまで十分なエビデンスがありませんでした。

 本研究では、大規模な診療所レセプトデータベースを用い、約250万人の患者を対象に、プライマリケア(身近な医師による健康管理や日常的な病気の治療など)における10種類の低価値医療・無価値医療の提供実態を分析しました。その結果、患者の約10人に1人が、年間に少なくとも1回、低価値医療・無価値医療を受けており、患者100人あたりでは年間約17.2回提供されていました。また、全ての低価値医療・無価値医療の半分は、医師全体の10%によって提供されており、年齢が高い、専門医資格を持たない、患者数が多い、および西日本で診療している、などの特徴を持つ医師ほどより多く提供している傾向が認められました。すなわち、低価値医療・無価値医療を減らすためには、そうした医療を多く提供する一部の医師層にターゲットを絞った介入が効果的であると考えられます。

 低価値医療・無価値医療の削減は、患者の安全や医療の質を損なうことなく医療制度の持続性を高める上で重要です。本研究結果は、そのための取り組みに資すると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 医学医療系
宮脇 敦士 准教授

掲載論文

【題名】
Primary Care Physician Characteristics and Low-Value Care Provision in Japan
(「低価値医療・無価値医療」の提供と関連するプライマリケア医師の特徴)
【掲載誌】
JAMA Health Forum
【DOI】
10.1001/jamahealthforum.2025.1430

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