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アジアでは炎症性腸疾患に合併する原発性硬化性胆管炎が欧米より少ない

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(Image by Yeexin Richelle/Shutterstock)
 アジア6か国の25施設が協力し、腸の難病である炎症性腸疾患(IBD)に合併する肝臓の病気、原発性硬化性胆管炎(PSC)について、初めての大規模な調査を行いました。その結果、アジアのIBD患者ではPSCの合併が欧米より少ないこと、また早期発見の重要性が示されました。

 原発性硬化性胆管炎(PSC)は、胆管が慢性炎症と線維化を繰り返すことで徐々に閉塞し、最終的には肝硬変や肝不全に至る難治性の疾患です。潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)と合併することが知られていますが、アジア地域では患者数が少なく、その合併率や臨床経過についての大規模な研究はこれまで行われていませんでした。そこで今回、アジア6か国が協力する多国間共同研究を実施しました。

 本研究では、日本、韓国、中国(香港を含む)、台湾、マレーシア、インドの6か国、25施設が参加し、約5万人のIBD患者のデータを解析しました。その結果、アジアにおけるPSCの有病率(合併率)は欧米と比べて明らかに低く、PSCを合併したIBD患者の予後は、欧米の報告と比べても概ね良好な傾向が示されました。また、診断時に黄疸などの症状を伴ったり、肝機能の程度を示す血清アルブミン値が低い患者では、肝移植が必要になるまでの期間が短いことが明らかとなりました。一方、近年では、診断時に症状がない「無症候性PSC」が増えており、血液検査でも肝機能が良好な傾向が見られました。肝移植までの期間も延びており、この背景には、磁気共鳴胆管造影(MRCP)という非侵襲的な検査の普及で、PSCがより早期の段階で発見されるようになったことが関係しています。

 本研究は、アジアにおけるPSCとIBDの合併例を初めて体系的に明らかにしたものであり、地域特有の特徴や医療体制を考慮した診療指針づくりに役立つと期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 医学医療系
秋山 慎太郎 講師

掲載論文

【題名】
Prevalence and Outcomes of Primary Sclerosing Cholangitis in Inflammatory Bowel Disease: A Multinational Study across Asia
(炎症性腸疾患における原発性硬化性胆管炎の有病率と臨床転帰:アジアにおける多国間共同研究)
【掲載誌】
Clinical Gastroenterology and Hepatology
【DOI】
10.1016/j.cgh.2025.11.020

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