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習慣的な低強度走運動は恐怖を思い出す海馬の活動を抑え、恐怖記憶の消去を促進する

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(Image by Bohdan Malitskiy/Shutterstock)
 スローランニング(低強度走運動)など習慣的な低強度の運動は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因となる恐怖記憶の消去を促進することが分かってきました。この効果の背景に、恐怖を思い出す役割を担う海馬の特定領域の活動を抑える神経メカニズムが関与することが、本研究で示唆されました。

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのストレス関連疾患に有効な非薬物療法として、運動が注目されるようになってきました。しかし、一般的に推奨される中〜高強度の運動は身体的・精神的なストレスを伴うため、ストレスに敏感なPTSD患者にとって、実施が難しいという課題があります。これに対し本研究チームは、誰にでも実施しやすいヨガやスローランニングに相当する低強度の運動に着目し、ラットを使った動物実験で、PTSDの原因となる恐怖記憶の消去を促進できることを明らかにしてきました。

 低強度走運動は、海馬に作用し、恐怖記憶の消去を促す脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現や神経新生を効果的に促進します。近年の報告では、そうした神経可塑性の向上が、恐怖想起(恐怖を思い出すこと)を誘導する海馬の活動を抑えるように働くとされ、低強度走運動による恐怖記憶の消去促進の背景にも、それと同様の抑制機構が働く可能性が考えられました。

 本研究では、このメカニズムを検証するため、恐怖を覚えさせる恐怖条件付けを行ったラットに4週間にわたる低強度走運動(スローランニングに相当)トレーニングを施した後、脳活動を評価しました。すると、恐怖反応の調節に関与する脳領域のうち、特に恐怖記憶の想起に重要な役割を果たす海馬背側CA3領域において活動低下が認められました。さらに、この領域の活動レベルは恐怖反応の強さと正の相関を示し、活動が低いほど恐怖反応も弱まることが明らかとなりました。

 以上の結果から、習慣的な低強度走運動トレーニングによる恐怖記憶の消去の促進には、恐怖記憶の想起に重要な海馬背側CA3領域および不安反応の表出に関わる腹側歯状回の活動低下が関連することが示唆されました。これらの知見は、身体的・精神的負荷の高い中〜高強度運動が困難なPTSD患者に対して、低負荷・軽運動が実施しやすく有効な非薬物療法となり得ることを、神経科学的観点から支持するものです。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学サイバニクス研究センター
征矢 英昭 客員教授(筑波大学体育系 名誉教授)

掲載論文

【題名】
Regular light-intensity exercise accelerates contextual fear extinction with reduced dorsal CA3 activation in male rats
(雄ラットにおいて習慣的な低強度運動は背側海馬CA3の活動低下を伴って文脈恐怖記憶の消去を促進する)
【掲載誌】
Neurochemistry International
【DOI】
10.1016/j.neuint.2026.106191

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