水江 光希 さん(人間学群 障害科学類 3年次)
障害者の背中を押せる存在に
水江 光希 さん
人間学群 障害科学類 3年
相手の話が分からないままにしない。その場で聞き返す。水江さんのモットーだ。小さな情報の欠落でも、それが重なると、全体像が見えなくなることもあると思うからだ。
新生児スクリーニングで重度の難聴と分かり、乳児の頃から高等部までの18年間、本学附属聴覚特別支援学校に通っていた。
実は、自分が障害者だと感じるようになったのは、大学に入ってからだ。それまで教員や友人らとは手話で会話し、コミュニケーションに困ることはなかったという。
筑波大学を進路に選んだ理由の一つに、障害学生の支援充実がある。例えば、大学に申し出ると、支援学生が紹介され、希望する講義の文字化などをサポートしてくれる。
それでも音が聞こえないと、周りがなぜ笑ったのか分からないことがよくある。相手の唇の動きは読めるが、早口だと大変だ。
入学直後は、分からずともそのままにしていた。周囲に聞いて、嫌われたくなかったからだ。そんな時、母の「周りは思ったより気にしてないよ」という言葉が転機になった。
それからは、聴覚障害を明かして積極的に人に声を掛けるようにした。周りの人たちは親切に対応してくれ、支援学生との交流も深まった。「大学生活を楽しめる余裕が持てるようになった」と、水江さんは振り返る。
こうした経験を、聴覚障害を持つ後輩たちに話す機会も増えた。「カラオケに行くのが恥ずかしい」という中学生には、「リズムが違ってしまっても、一緒に楽しめばいい。聞こえているのに、みんな採点で100点取れてないじゃん」と答えたこともある。
昨年度は大学の手話サークル会長を務めた。手話表現を学び、手話を使ったゲームなどで交流を深めることが活動の柱で、メンバーは約70人。聴覚障害者も約10人いた。
コロナ禍でオンライン化を迫られ、1対1での対応が難しくなる中、チャット機能の活用を打ち出した。話が伝わらなければもう一度繰り返すこともルール化した。「活動をみんなに楽しんでほしい」と考えてのことだ。
バリアフリーやユニバーサルデザインなどマイノリティー支援について深く学び、聴覚障害だけでなく、広く障害者全般の支援ができる仕事に就きたいと、夢を描く。
豊かな表情と身振り、手振り。障害に気後れしない姿勢。水江さんと話していると、聞き手の気分も明るくなる。そのコミュニケーション力が、社会のバリアをなくしていく。
後輩にひとこと
挑戦心があるなど、筑波大学には刺激を受ける人がとても多く、自分も頑張ろうという気持ちになれる。幅広い視点から学びたいなら、お薦めの大学です。何かに失敗しても、1度目は上手くいかなくて当たり前。3回、4回とやってみると、世界が広がりますよ。
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