テクノロジー・材料

超伝導電流は電子ペアの流れではない~標準理論に根本的な変更を迫る新理論の提案~

研究イメージ画像 (Image by ktsdesign/Shutterstock)


超伝導は電気抵抗ゼロで電流が流れる現象です。超伝導を説明する標準理論は、1957年に提出されたBCS理論が基礎となっています。この理論では、超伝導状態とは、2つの電子がペアになった「クーパーペア」ができている状態であり、その流れが超伝導電流であると説明されます。その根拠となっているのが、超伝導に特有の、アンドレーフ=セント・ジェームズ反射とジョセフソン効果と呼ばれる現象です。その後、銅酸化物高温超伝導体の超伝導機構など、標準理論では説明できない現象が数多く指摘されていますが、銅酸化物においてもアンドレーフ=セント・ジェームズ反射とジョセフソン効果は観測されており、「超伝導電流は電子ペアの流れである」とする点は、普遍的であると考えられてきました。


本研究では、これに先立ち提案した新理論が、アンドレーフ=セント・ジェームズ反射とジョセフソン効果も説明できることを明らかにしました。ここでは、超伝導電流を、電子ペアではなく、ベリー位相から生じる電流として理解します。ベリー位相は、電子が運動する空間にねじれをもたらし、これが電子の流れを生み、超伝導電流が生じると説明します。電子ペアもこの空間のねじれにより流れ、超伝導電流の一部となります。つまり、電子ペア形成の役割は、超伝導電流を生じるベリー位相を安定化することであり、超伝導電流の担い手として不可欠なものではないことを意味します。


この新理論は、これまでに指摘されている標準理論の不備をすべて解消し、現在の標準理論に根本的な変更を迫るものです。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学計算科学研究センター
小泉 裕康 准教授

関連リンク

計算科学研究センター
創基151年筑波大学開学50周年記念事業