テクノロジー・材料

既存の1H-MRIを簡単に23Na-MRI対応にできる付加型動作環境を開発

研究イメージ画像

 人間の体の中にある水素などの原子核には、磁石の性質があります。こうした原子核を強い磁場の中に置き、特定の波長の電磁波を加えると、原子核が共鳴して微弱な電磁波が生じます。この電磁波を捉えて人体の内部などを画像化するのが磁気共鳴画像化(MRI)装置です。


 人間の生体の約3分の2は水なので、臨床診断や医療研究に広く使われるMRIは、水に含まれる水素の原子核(1H核)を可視化することを目的にしています。一方、X核と呼ばれるナトリウムやリン、カリウムなどの原子核も共鳴現象を起こします。1Hを対象とした従来のMRIでは検出できない生体内のイオンの代謝や恒常性に関する情報を可視化できるとして、臨床応用への新たな展開が期待されています。しかし、既存のMRIはほとんどが1Hにしか対応していません。既存装置のハードウェアやソフトウェアをアップデートすればX核に対応できますが、装置全体あるいは大部分を交換する必要があるためコストが高く、実際にはほとんど普及していません。


 そこで本研究チームは、1Hのみを対象とした既存のMRIシステムをほとんど変更せずに、ナトリウム原子核(23Na)のMRIを可能にするアドオン(付加)型の高周波プラットフォーム(動作環境)を開発しました。


 開発した装置は、アマチュア無線で使われるクロスバンドレピータという技術を使うことで、既存の1H-MRI用の送受信装置をそのまま流用し、23Na用の信号を送受信できるようにします。


 その検証として、磁場強度1.5テスラの四肢撮像用1H-MRI装置に開発したアドオン型23Na-MRI装置を装着し、マウス生体内の1Hと23NaをMRIで画像化することに成功しました。


 本プラットフォームにより、既存の1H-MRI に加えて23Na-MRIを低コストで実現できるようになります。既存装置へのハードウェア部分の脱着が簡単にできるため、複数の装置や施設間で使用可能です。さらに、変換周波数を変えることで他のX核のMRIの取得も可能で、広くX核のMRIの臨床応用を促進することが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学数理物質系
寺田 康彦 准教授

新潟大学大学院自然科学研究科
佐々木 進 准教授

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