テクノロジー・材料

資産運用のための強化学習システムを提案~モジュール化で拡張性や再利用性が向上~

研究イメージ画像 (Image by ranjith ravindran/Shutterstock)

 資産運用(ポートフォリオ管理)は、強化学習(reinforcement learning)技術を利用したAIの有望な応用先の一つになっています。しかし、既存手法には、拡張性や再利用性が乏しいという問題がありました。ある例に適した意思決定システムを強化学習で構築後、資産の変動や新しい種類のデータを入力する必要が生じても、システムを再構築することが容易ではなかったのです。


 そこで本研究では、構築されるシステムに拡張性や再利用性を持たせることを念頭に置き、資産運用に適したモジュール構成のマルチエージェント強化学習システム(MSPM)を開発しました。MSPMは、個々の資産(アセット)毎に用意されるEAM(Evolving Agent Module)とEAM群からの入力をもとに意思決定を行うSAM(Strategic Agent Module)の2種類のモジュールから成ります。ここで各EAMは非同期に学習構築が可能で、さらには再利用も可能であることから、MSPMは資産運用における拡張性にも優れています。


 過去8年間の米国株式市場データを用いた検証実験において、提案手法と代表的な既存手法5種との比較シミュレーションを行った結果、収益率において全ての既存手法を上回る性能結果を得ました。また、4種類の異なるポートフォリオを用いてMSPM内のシステム検証を行ったところ、EAMを働かせた場合は働かせない場合に比べて、収益率を大幅に向上させる効果をもたらすことが確認できました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 システム情報系 知能機能工学域
田中 文英 准教授

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