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オミクロン株の変異プロセスを数理モデルで評価

研究イメージ画像 (Image by Naeblys/Shutterstock)

 新型コロナウイルスのオミクロン株には、ヒトの細胞に結合するスパイクタンパク質と呼ばれる部位に、原株に対して30以上の変異があります。他の変異株の変異は10前後以下であるのに比べて、オミクロン株だけに多くの変異が発生した原因が議論されています。これまで、①モニタリングされていないヒトの集団で変異を繰り返した、②ヒトから動物に感染し、そこで変異を繰り返した後、ヒトに再感染した、③免疫不全の患者の体内で免疫逃避の変異を繰り返した、という3つの仮説が提唱されていましたが、いずれの仮説も、十分に説明ができない点がありました。


 本研究では、オミクロン株のスパイクタンパク質に含まれる同義変異(アミノ酸を変化させない変異)と非同義変異(アミノ酸を変化させる変異)の比率に着目し、変異の平衡を仮定した数理モデルを用いて、オミクロン株に見られる29の非同義変異が生じる間に同義変異が1つ以下しか生じない確率を計算しました。その結果、オミクロン株のスパイクタンパク質に見られる変異の偏りが自然に生じる確率は0.2%となりました。これは、オミクロン株のスパイクタンパク質の変異が、人工的な遺伝子組換えなどの、自然界にない何らかのプロセスを経ている可能性を強く示唆しています。


 新型コロナウイルスを人工的に変異させ、その特性を調べる研究は、世界中で盛んに行われていますが、同時に、それらが実験室から流出した場合の影響が危惧されています。ウイルスを人工的に操作する研究の規制と監視の仕組みを構築する必要性があると考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
掛谷 英紀 准教授

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