テクノロジー・材料

自然光景の中から物体を見分ける神経機構を解明

研究イメージ画像 (Image by bodnar.photo/Shutterstock)

 私たちは自然の風景に含まれているさまざまな物体を認識する能力を持っています。物体認識の基礎は、風景を物体ごとに切り分けること(図地分離)にあります。例えば、森の中の人を認識するには、森の中に、森以外の「何か」があること見つけることが重要な第一歩となります。しかし、その「何か」が人だと分かっていない段階で、どうやってこれを背景から切り抜くのかは、解明されていませんでした。


 本研究では、背景と物体を分離しているのは、大脳皮質にある第4次視覚野(V4)の細胞集団であること、特に、数十の細胞集団が図地・輪郭・表面の情報を統合して、「何か」の情報を形成していることを見いだしました。さまざまな自然風景の断片を人に見せて、図地判断の難しさを評価し、同時に、同じ画像をサルに見せてV4の神経反応と比べたところ、人にとって図地判断の難しい画像ほど、神経細胞の反応は時間がかかり、かつ曖昧になることが分かりました。このことは、V4の神経細胞集団が図地分離の知覚を担っていることを示します。


 本研究グループでは、これまでに、その集団に含まれる細胞の数は数十程度であること、一つ一つの細胞は図地と同時に輪郭・表面などを処理していること、また、輪郭や表面は共通の細胞集団によって同時に処理されていることを明らかにしており、今回の成果は、これらの結果に基づいたものです。


 曖昧で不十分な情報から正しい認識や判断ができるメカニズムを知ることは、AIや機械学習による認識や判断の質的向上にも貢献すると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
酒井 宏 教授

大阪大学大学院生命機能研究科
田村 弘 准教授

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システム情報系

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