テクノロジー・材料

画像情報から放射線治療中の臓器の動きを予測する支援技術を開発

研究イメージ画像 (Image by Mark_Kostich/Shutterstock)

 放射線治療においては、治療時の臓器の動きを正確に予測することが重要です。リアルタイムで患部付近の断面を撮影し、この画像情報から臓器の三次元的な動きを計算する技術を開発しました。これにより、周辺臓器との位置関係から、膵臓などの動きを高精度に予測することが可能となります。

 がんなどに用いられる放射線治療は、体にメスを入れることがなく、また、通院治療が可能なため、社会復帰が早いという特徴があります。しかし、周辺の健康な臓器にも放射線の影響が及ぶ可能性があり、動きのある病変組織に対して、強い放射線を当てることが難しいという問題があります。呼吸のように規則正しい動きは予測が容易ですが、周辺臓器との接触などによる不規則な動きは予測が困難です。そこで本研究では、放射線治療中にリアルタイムで3方向から患部付近の断面(二次元画像)を撮影し、周辺臓器との位置関係から、各臓器の三次元的な動きを予測する技術、および、どの断面情報を用いればより正確な結果が得られるかを判断するための断面選択手法を開発しました。


 この技術を検証するため、20症例の公開MRIデータについて膵臓の位置を計算した結果、3方向の断面情報のうち1方向のみを用いた場合には5.11 mm、3方向すべてを用いた場合には2.13 mmの誤差で、膵臓の位置を特定できることが分かりました。また、一部の結果で、三次元情報があらかじめ得られている理想的な場合と同等の精度の結果が得られました。


 本研究成果は、周辺の健康な臓器への放射線照射を避け、より安全な放射線治療につながる技術として実用化が期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
黒田 嘉宏 教授

掲載論文

【題名】
2D Slice-driven Physics-based 3D Motion Estimation Framework for Pancreatic Radiotherapy.
(膵臓放射線治療のための二次元スライス駆動の物理ベース三次元運動推定フレームワーク)
【掲載誌】
IEEE Transactions on Radiation and Plasma Medical Sciences
【DOI】
10.1109/TRPMS.2023.3313132

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