生物・環境

【Nature Index Selection】交尾刺激に応答して卵子を作り出す過程を調節する新しい神経伝達メカニズムを発見(Research highlights 2021年2月)

シュプリンガー・ネイチャーが運営するデータベースサイトNature Indexでは、毎月、主要な82ジャーナルの中から、本学所属の研究者による研究論文1報を、Research highlightsとして選出しています。2021年2月は、本件が紹介されました。
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幹細胞

(撮影:Yuto Yoshinari)

あらゆる生物の体は、各々の役割に特化した細胞の集まりでできています。それらの細胞を生み出す元となるものが幹細胞であり、その働きは、幹細胞が局在する場所から伝達されるシグナルによって制御されています。ところが近年の研究により、そのシグナルが、ホルモンや神経伝達物質といった外部からのシグナルによって調節されることが明らかになってきました。ホルモンや神経伝達物質による幹細胞の制御は、傷害やストレスに対する応答、発生過程で見られ、需要に応じた幹細胞の増殖を可能にしています。

モデル動物であるキイロショウジョウバエにおいては、生殖幹細胞は交尾後に増加します。従って、交尾が生殖幹細胞の増殖を引き起こす外部シグナルであると考えられます。本研究では、キイロショウジョウバエの卵子の元となる生殖幹細胞が交尾刺激に応答して増殖するプロセスが、卵巣へと伸びる神経によって調節されていることを明らかにしました。この神経はオクトパミンと呼ばれる神経伝達物質を産生・放出し、卵巣に存在するオクトパミン受容体に受け取られることが、交尾に伴う生殖幹細胞の増殖に必須であることを解明しました。本研究は、動物の生殖を支える生殖幹細胞の調節に、卵巣へと伸びる神経による直接的な支配が関わることを示した初めての成果です。オクトパミンは哺乳動物のノルアドレナリンに相当し、進化的に幅広く保存された神経伝達物質であると考えられていることから、今回の成果は動物に共通した神経による幹細胞の制御メカニズムの解明に貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
丹羽 隆介 教授

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