生物・環境

従来の定説を覆す増殖装置を持つRNAウイルスの発見

p202012181400.jpg (Image by vchal/Shutterstock)

ウイルスは、宿主細胞の中で遺伝子を複製することで増殖します。RNAウイルス(コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどを含むウイルスの一群)は、ゲノムがRNAで構成されているウイルスの総称で、RNA依存性RNA合成酵素(RdRp)によりゲノムを複製します。RdRpは、すべてのRNAウイルスが有しており、単一の遺伝子によって作られると考えられています。また、その構造や設計図となる遺伝子配列は、これまでに知られている数千種のRNAウイルスにおいて、良く保存されています。


本研究では、ウイルスゲノムの多様性を明らかにする目的で、100株以上の糸状菌を対象にRNAウイルスの探索を行いました。その結果、RdRpが2つの遺伝子に分割されながらも増殖するという、従来の定説とは異なる増殖メカニズムを持つ、新種のRNAウイルスを発見しました。このことは、RNAウイルスのゲノムが、実は極めて高い可塑性を有していることを示唆しています。


RNAウイルスの中には、RdRpの遺伝子しか持たないものもあり、RdRpはRNAウイルスの本体とも言える酵素です。RdRpがすべてのRNAウイルスに唯一共通する酵素であることから、その分類や多様性を調査することで、地球上のRNAウイルス分布が明らかにされてきました。しかしながら、今回、分割された形のRdRpを持つRNAウイルスの存在が確認されたことで、RNAウイルスのRdRpは単一の遺伝子によって作られるという前提が崩れ、今までになかった視点でのウイルス探索が可能になります。これにより、今後、さらなる未知のRNAウイルスが発見され、ウイルスの進化や多様性への理解が深まると期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学 生命環境系
萩原 大祐 准教授
浦山 俊一 助教

千葉大学 真菌医学研究センター
矢口 貴志 准教授

関連リンク

生命環境系
創基151年筑波大学開学50周年記念事業