生物・環境

始原生殖細胞では性染色体上の遺伝子発現に性差がある 〜性が決まる仕組みの解明へ〜

研究イメージ画像 (Image by koya979/Shutterstock)

ショウジョウバエは、ヒトと同じように、X染色体を一本だけ持てばオス(XY)に、二本持つとメス(XX)になります。従って、X染色体上に存在する遺伝子の総数は、メスはオスの2倍となります。オスの体を作る体細胞では、Male-specific lethal (MSL)複合体と呼ばれる分子群の働きにより、X染色体上の遺伝子の発現量をメスの2倍とすることで、X染色体上の遺伝子の発現量をオスとメスで等しくします。この機構は遺伝子量補償と呼ばれています。しかし、生殖細胞のもとになる始原生殖細胞でも、体細胞と同様に遺伝子量補償が働いているのかは、明らかになっていませんでした。


本研究では、ショウジョウバエの胚(卵)からオスとメスの始原生殖細胞をそれぞれ採取し、そこで発現している遺伝子を、RNAシーケンシング法により網羅的に同定しました。また、MSL複合体の遺伝子を強制的に発現させる実験を行いました。これらの結果から、ショウジョウバエにおいて、オスの始原生殖細胞でMSL複合体が形成されず、遺伝子量補償が、始原生殖細胞では働かないことを発見しました。X染色体上には、始原生殖細胞のメス化に関わる遺伝子が複数存在しています。オスの始原生殖細胞では、遺伝子量補償が働かないために、メス化に関わる遺伝子の発現量が、メスの半分になり、そのためにメス化が抑制されると考えられます。本研究成果は、生殖細胞の性を決める仕組みの解明に貢献すると期待できます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター(TARA)
小林 悟 教授

帝京大学 理工学部バイオサイエンス学科
太田 龍馬 講師

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