生物・環境

希少なカエデ「クロビイタヤ」の不連続分布の謎を解く〜気候変動がもたらした分布変遷〜

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 クロビイタヤは日本に生育するカエデの一種で、湿地の開発などにより個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されています。また、その生育地は、北海道、北東北、本州中部と不連続に分布(隔離分布)しています。


 本研究では、クロビイタヤが現在の分布に至ったプロセスや、遺伝的多様性を保全する上で重要な個体群などを明らかにするため、分布域を網羅するようサンプルを採集し、遺伝子解析を行いました。その結果、クロビイタヤの隔離分布した集団は、遺伝的には明瞭に分化しておらず、連続的な変異をもつことが分かりました。このことは、現在見られる不連続な分布が、最終氷期以降の温暖化にともなって比較的短い時間で形成されたことを意味しています。さらに、本州中部の高標高域にある個体群から、他地域ではみられない希少な遺伝子型が検出され、この地域が本種のレフュージア(逃避地)として機能していたことが示唆されました。地形の起伏が存在すると、植物は、相対的に短い距離で、生育に適した気候帯に移動をすることができます。この地に山塊があったために、クロビイタヤは分布を上下に移動させ、個体群を残すことができたと考えられます。


 本研究は、過去に起こった気候変動に基づく希少植物の分布の変化を、遺伝子解析から明らかにした点が特色です。このような手法は、地球温暖化に対する野生生物の応答に関する将来予測にも活用できると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
佐伯 いく代 准教授


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