生物・環境

寒冬と暖冬を引き起こす大気の遠隔影響パターンの力学構造を解明

研究イメージ画像 (Image by Chaleephoto/Shutterstock)

 ラニーニャ現象は、日本の寒冬を引き起こす要因の一つとされています。2020年夏から2021年の夏前まで継続して発生しており、日本の気温は2020年12月から2021年1月中旬までは低温傾向を示しました。しかし、2021年1月下旬から2月にかけては高温傾向となりました。本研究では、ラニーニャ現象の継続発生期間中に、寒冬と暖冬になった理由を、観測データ(全球大気データや人工衛星データ)と、数値モデルを用いたコンピューターシミュレーションによって解明しました。


 その結果、上記の低温期間は熱帯インド洋東部から南シナ海付近で対流活動が活発になっており、南アジアに高気圧、北海道付近に低気圧という状況になっていました。日本の寒冬時によくみられる大気のテレコネクション(遠隔影響)パターンに一致しており、「東南アジアー日本(SAJ)」パターンと名付けました。一方、高温期間は対流活動の中心がフィリピンの東に移り、日本の南に高気圧、北海道付近に低気圧という状況でした。これは、日本の冬によくみられるテレコネクション「西太平洋(WP)」パターンに似ています。つまり、低温期間から高温期間への変化は、熱帯の対流活動が西から東に移動し、これに対応して高気圧の位置が変化したことが原因と考えられます。


 日本の夏の猛暑時には、日本付近に高気圧が居座る気圧配置がみられます。これは、熱帯西部太平洋で活発化した対流活動に伴う「太平洋ー日本(PJ)」パターンにより引き起こされることが知られています。ところが、SAJパターンでは、PJパターンとよく似た場所で対流活動が活発化しているにもかかわらず、日本付近は低気圧という状況になります。本研究では、南シナ海での対流活動活発化に加え、熱帯からの風がチベット高原南東部の対流圏上層に吹き込む(収束する)ことが、SAJパターンの形成や維持に重要であることも明らかになりました。


 このような冬季における寒暖の遷移を詳細に検討することで、季節予報の精度向上に貢献することが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
植田 宏昭 教授


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