生物・環境

昆虫が冬季に卵を作らないようにする神経の機能を解明

研究イメージ画像

 多くの生物にとって休眠は、生存に不利な環境下でのエネルギー消費を減らすため、発生や生殖を一定期間抑制する生存戦略です。一部の昆虫では、生殖に適さない季節に生殖器官の発達を抑制する生殖休眠が見られます。生殖休眠は、昆虫ホルモンの一つである幼若ホルモンの量が低下することによって引き起こされます。このような生殖休眠の制御には、脳から幼若ホルモン産生器官(アラタ体)に投射する神経が関与することが50年以上前から明らかになっていたものの、どのような神経分泌因子により幼若ホルモン量が制御されるのかは未解明なままでした。


 本研究では、キイロショウジョウバエを用いた解析により、神経ペプチドDiuretic hormone 31(DH31)が生殖休眠を制御していることを初めて明らかにしました。また、脳からアラタ体に投射(作用)する神経がDH31を産生しており、この神経から分泌されるDH31が生殖休眠に重要であることを見いだしました。さらに、アラタ体ではDH31の受容体が発現しており、DH31を受け取ることで幼若ホルモン量が抑制され、生殖休眠が引き起こされることが判明しました。


 さまざまな昆虫で、アラタ体に投射する神経が生殖休眠を制御していることが明らかになっていること、DH31が保存されていることを踏まえると、DH31による生殖休眠制御は、幅広い昆虫種で保存されている可能性があります。昆虫の休眠制御メカニズムを知ることは、農業害虫や衛生害虫の新たな防除技術開発に資することが期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
丹羽 隆介 教授

掲載論文

【題名】
Female reproductive dormancy in Drosophila is regulated by DH31-producing neurons projecting into the corpus allatum.
(キイロショウジョウバエメスの生殖休眠はアラタ体に投射するDH31産生神経によって制御される)
【掲載誌】
Development
【DOI】
10.1242/dev.201186

関連リンク

生存ダイナミクス研究センター

創基151年筑波大学開学50周年記念事業