生物・環境

人工知能を用いた細胞培養のための培地最適化手法を開発

研究イメージ画像 (Image by Anatolii Stoiko/Shutterstock)

 細胞培養は医薬品生産や再生医療などの研究に必要不可欠な基盤技術です。細胞培養の良し悪しを決める要因は、培地(多種多様な栄養成分を含む溶液)の成分です。そのため、食品、医薬、バイオエネルギーや材料などの幅広い分野で、培地の最適化や新規開発が行われています。しかしながら、細胞種によって培養に適した培地は異なっており、目的に応じた培地の開発には膨大な時間と労力を必要とすることから、より効率的に培地を開発するための手法が求められてきました。そこで本研究では、培地最適化に人工知能(機械学習)を用いることで、従来よりも少ない労力で高性能な培地を開発する手法を確立しました。


 具体的には、31種類の栄養成分を組み合わせた232種類の培地を作成し、それぞれの培地でヒト子宮頸がん由来の細胞を培養しました。これらの実験データを機械学習に適用し、細胞活性が最大となる培地の予測を行うとともに、予測精度を高めるために、アクティブラーニングを採用しました。その結果、市販培地よりも細胞活性の高い培地の最適化に成功しました。さらに、細胞培養の前期と後期において、細胞活性を最大化する培地組成が異なることを見いだし、その培地成分を明らかにしました。


 以上のことから、培地開発における人工知能の活用例として、効率的な培地最適化が可能であることが示されました。本研究手法は、あらゆる細胞種や培養目的に応じた培地開発に適用可能であり、細胞培養を基盤技術とする幅広い産業や学術研究に貢献すると期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
應 蓓文 准教授

掲載論文

【題名】
Employing active learning in the optimization of culture medium for mammalian cells
(アクティブラーニングによる哺乳動物細胞の培地最適化)
【掲載誌】
npj Systems Biology and Applications
【DOI】
10.1038/s41540-023-00284-7

関連リンク

生命環境系