生物・環境

降雨による空間放射線量率の変化を説明するモデルを開発

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 2011年の福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性核種が、福島県の森林で空間線量率(時間当たりの放射線量)の上昇を引き起こしました。物理的減衰や除染により、長期的には順調に減少していますが、降雨後に低下したり乾燥時には上昇したりするなど、空間線量率の一時的な変化もみられ、地域住民の不安にもつながっていました。


 降雨後の空間線量率の低下は、土壌水分量が増えることで放射線の遮蔽効果が高まるためと予想されていましたが、空間線量率に対する土壌水分の影響を定量化した研究はこれまでありませんでした。


 本研究では、土壌水分量と空間線量率を現地で観測し、降雨による空間線量率の変化を推定するモデルを開発しました。土壌水分データがない場合でも推定が可能な手法です。


 観測は福島県内の二地域(浪江町および川内村)で実施しました。浪江町では土壌水分の増加とともに空間線量率が減少し、その変化を降雨量から説明できました。川内村でも、実効雨量から土壌水分の推定が可能でした。空間線量率では、ばらつきが大きいものの変動傾向は推定できました。


 この手法は、降雨の影響を除去して空間線量率の長期減少傾向を正確に定量化すること役立ち、福島の環境がどれくらい回復しているかについての正確な評価につながることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系/放射線・アイソトープ地球システム研究センター(CRIES)
恩田 裕一 教授

掲載論文

【題名】
Changes in air dose rates due to soil moisture content in the Fukushima prefecture forests.
(福島県の森林における土壌含水率の変化による空間線量率の変化)
【掲載誌】
Environmental Pollution
【DOI】
10.1016/j.envpol.2023.122147

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