生物・環境

外来魚ブルーギルは互いに巣を守り卵捕食を避けることで繁殖を広げる

研究イメージ画像
 野尻湖に生息するブルーギルの繁殖生態を調査しました。その結果、オス同士が互いに隣接した場所に巣を作り、その周りを警備する行動により、卵捕食を受けにくくしていることが分かりました。外来魚であるブルーギルが日本での定着に成功した要因は、このような繁殖特性にあると考えられます。

 ブルーギルは日本を含め世界中の淡水域に放流されており、在来生物に深刻な影響を及ぼす侵略的外来生物の一種とみなされています。本種は、オス同士が隣接した場所に巣を作る「コロニー繁殖」を行い、その周囲を警備する(保護オス)ことで知られますが、侵入先の水域における繁殖生態はあまり研究されていません。そこで、長野県北部の野尻湖でブルーギルの繁殖生態を、水中ビデオによる行動解析と保護オス駆除実験により調査しました。


 その結果、ブルーギルは6月から7月にかけて湖の沿岸域で産卵し、巣の多くは集合コロニーの中に作られましたが、他の巣から遠く離れた「単独巣」も全体の35%を占めました。オスは、自らの尾で卵に水流を送る、巣の周囲を旋回する、巣に近づいてくる侵入者を追い払うなどのさまざまなネスト保護行動を示しました。この保護オスを除去したところ、卵捕食者として4種105個体が確認されましたが、9割以上は同種のブルーギルでした。しかし、近隣に別の保護オスがいるコロニー内では、保護オスが除去されても、卵捕食を受ける割合が低く、捕食者の到着に時間を要しました。以上のことから、侵入先である日本の水域でのブルーギルの定着成功は、潜在的な在来捕食者の少なさや、コロニー産卵という繁殖特性と密接に関連していると考えられます。また、わが国で個体数低減を目的にしばしば実施される、釣り等による保護オス除去は、コロニー繁殖するブルーギルに対しては、期待されるよりもその効果が低い可能性があります。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
ピーターソン マイルズ イサオ 日本学術振興会特別研究員PD


掲載論文

【題名】
Male guarding behavior and brood predators of invasive Bluegill (Lepomis macrochirus) in a Japanese Lake
(日本の湖における外来魚ブルーギル (Lepomis macrochirus)のネスト防衛行動と卵捕食者)
【掲載誌】
North American Journal of Fisheries Management
【DOI】
10.1002/nafm.10976

関連リンク

山岳科学センター菅平高原実験所
生命環境系

創基151年筑波大学開学50周年記念事業