生物・環境

植物が共生菌への鉄供給によって窒素を得る仕組みを解明

研究イメージ画像
(Image by Miha Creative/Shutterstock)
 マメ科植物体内の窒素状態に応じて全身的(地上部と根)に機能し、窒素固定細菌の根粒菌が共生する根粒に鉄を集める働きを持つペプチド因子を発見しました。さらに、根粒共生をしない植物でも、このペプチド因子が体内の窒素と鉄のバランスを保つことで、窒素恒常性を制御することも明らかにしました。

 マメ科植物は、窒素固定細菌である根粒菌との共生を介し、生育に必須な栄養素である窒素を効率的に獲得する仕組み(根粒共生)を持っています。 植物の根に形成される共生器官が根粒です。根粒菌はその中にいて、空気中の窒素をアンモニアへと変換する窒素固定を行います。窒素固定反応を触媒する酵素が働くためには鉄が必要ですが、どこから、どのように鉄が根粒へと運ばれて窒素固定のために使われるのか、その仕組みはほとんど解明されていませんでした。


 本研究では、マメ科のモデル植物ミヤコグサを用い、根粒共生過程における体内の窒素状態に応じた遺伝子発現解析を行いました。その結果、50個程度のアミノ酸によって構成されるIRON MAN (IMA)ペプチドを同定しました。IMAペプチドは根粒菌の感染によって全身的(地上部と根)に機能し、根粒に鉄を集める働きを持つことが分かりました。


 本研究ではさらに、根粒共生を行わない植物であるシロイヌナズナにおけるIMAペプチドの機能を解析しました。その結果、ミヤコグサとシロイヌナズナのいずれにも、IMAペプチドが植物体内の窒素量の増加に応じて鉄を得ることで窒素恒常性を維持し、植物の成長を制御する仕組みが存在することを発見しました。


 本研究グループはこれまで、土壌中の窒素栄養に応じた根粒共生の制御の仕組みを明らかにしています。今回の研究は、これらの先行研究に基づくものです。窒素栄養に応じた鉄獲得のメカニズムが明らかになったことで、植物の環境適応の仕組みに関する理解がさらに深まりました。


 本研究成果は、植物の微生物共生や栄養利用の能力を最大限に引き出し、持続可能な社会に貢献する技術開発につながることが期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
壽崎 拓哉 准教授

名古屋大学大学院理学研究科
松林 嘉克 教授

東京大学大学院農学生命科学研究科
反田 直之 助教



掲載論文

【題名】
IMA peptides regulate root nodulation and nitrogen homeostasis by providing iron according to internal nitrogen status.
(IMAペプチドは体内の窒素状態に応じて鉄を供給することにより根粒形成と窒素恒常性を制御する)
【掲載誌】
Nature Communications
【DOI】
10.1038/s41467-024-44865-4

関連リンク

生命環境系

創基151年筑波大学開学50周年記念事業