生物・環境

長野県上高地における外来マス類による在来イワナへの影響

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 長野県上高地に生息する外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナの種間競合関係を調べました。カワマスはイワナと食性および環境の生態的地位が重なること、ブラウントラウトはイワナを捕食することが確認され、これらの影響がイワナの減少につながっていると考えられます。

 サケ科魚類は養殖・遊漁目的で世界の淡水域に広く移入されてきました。日本には19世紀末に、欧州原産のブラウントラウトや北米原産のカワマスが導入され、これらが日本のイワナの分布や生育環境に負の影響を与えていることが危惧されています。特に、長野県上高地では、大正~昭和初期に放流された外来マス類が優占する一方、イワナは過去数十年間で極端に減少したことが知られています。


 本研究では、外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナが混生する梓川上流域において、水中観察と消化管内容物分析を行い、これら3種の種間の競合関係を明らかにしました。2021年の6~9月にわたって、3種の摂餌行動を水中観察した結果、1分あたりの摂餌回数はどの種でも同程度でしたが、カワマスとイワナは底つつき、ブラウントラウトは中層摂餌が多い傾向が認められました。また、消化管内容物の組成には魚種によって違いがあり、イワナとカワマスでは水生動物が主体で類似していたのに対し、ブラウントラウトでは陸生動物が主体で、前者2種とは異なりました。また、大型のブラウントラウトからは、陸生昆虫に加え、両生類、魚類なども検出されました。


 これらの結果から、カワマスの餌は在来イワナと大きく重複すること、ブラウントラウトはイワナを直接捕食するほか、大型陸生動物の捕食を通じて渓流生態系全体に影響を及ぼしている可能性が示唆されました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
ピーターソン マイルズ イサオ 日本学術振興会特別研究員PD

長野県環境保全研究所
北野 聡 主任研究員

水産研究・教育機構水産技術研究所 日光庁舎
山本 祥一郎 主幹研究員

掲載論文

【題名】
Species-specific foraging behavior and diets of stream salmonids: An implication for negative impacts on native charr by nonnative trout in Japanese mountain streams
(河川性サケ科3種の摂餌行動と食性:外来マス類による在来イワナへの影響)
【掲載誌】
Ecological Research
【DOI】
10.1111/1440-1703.12419

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