プリン代謝と脳内のミクログリア形態変化との新たな関係を発見
プリン体の代謝を阻害する免疫抑制剤をマウスに投与すると、生体分子「グアノシンヌクレオチド」の脳内濃度が低下し、細胞内のGTPと結合する低分子量Gタンパク質の活性が抑制されること、それによって脳内の免疫細胞であるミクログリアの形態が変化することを発見しました。
ミクログリアは、脳やせき髄などの中枢神経系で働く免疫細胞です。胎児期から脳内に存在し、生涯を通じて、脳の恒常性を維持する働きがあります。中でも、出生直後におけるミクログリアは、神経回路の形成や異物の除去、脳血管の構築など、多彩な役割を担うことが報告されています。また、これら一連の脳発生過程で、ミクログリアは細胞の形態を変化させ、多様な性質を持ったミクログリアへと変わることが知られています。しかし、出生後にミクログリアの性質が変化する詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。
本研究チームは、プリン代謝がミクログリア細胞の形態制御に関っていることを報告してきました(Okajima T et al. eNeuro 2020)。プリン代謝では、プリン環を基本骨格に持つ塩基(アデニンとグアニン)やその類縁体の代謝を調整し、エネルギー産生や核酸の生合成が行われます。
本研究ではその過程で、プリン代謝の中間代謝産物イノシン酸に注目しました。イノシン酸を中心にアデノシン三リン酸(ATP)やグアノシン三リン酸(GTP)などの核酸が産生されます。そこで、イノシン酸からのGTPを産生する経路を阻害する薬剤のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与したところ、グアニンと糖、リン酸が結びついたグアノシンヌクレオチドの脳内濃度が低下しました。また、細胞骨格の構築などに関わる低分子量Gタンパク質の活性化も抑制されました。さらに、低分子量Gタンパク質によって制御される細胞形態を観察したところ、ミクログリアの細胞突起数が減少し、発生に伴う形態変化が抑制されることを発見しました。
ミクログリアは、細胞突起の伸長退縮を繰り返しながら、周辺の細胞や組織とコミュニケーションをとっています。そのため、ミクログリアの発達に伴う形態変化のメカニズムを明らかにすることは、ミクログリアの機能獲得やその破綻によって引き起こされる疾患の理解につながることが考えられます。本研究成果から、免疫抑制剤として使われるMMFがミクログリアを標的とする新しい創薬研究につながることも期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
照屋 林一郎 生物学学位プログラム(博士後期課程)3年次筑波大学生命環境系
鶴田 文憲 助教
掲載論文
- 【題名】
-
Mycophenolate mofetil reduces the branching of microglial processes
(ミコフェノール酸モフェチルの投与によってミクログリアの細胞突起数は減少する) - 【掲載誌】
- Molecular Brain
- 【DOI】
- 10.1186/s13041-025-01271-1
関連リンク
生物学学位プログラム生命環境系