生物・環境

福島第一原発事故由来の海洋中放射性物質濃度に対する河川流出の影響を地点ごとに定量的に推定

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 福島第一原発事故以降、福島・宮城両県の沿岸域の海洋中放射性物質は、原発近傍からの漏洩(直接漏洩)や周辺河川からの流出(河川流出)などを供給源として、現在も事故前以上の濃度を維持しています。これらの供給経路が海洋中濃度に与える影響を、地点ごとに定量的に推定することに成功しました。

 2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された主要放射性物質の一つである 137Csは、その長い半減期(30.2年)のため、原発近傍からの漏洩だけでなく、周辺河川を介して現在も海洋への流出が続いています。そして、周辺海域の海洋中137Cs濃度は、依然として事故前の数倍から数十倍を維持しています。この海水濃度であれば、海産物の食品基準値(100Bq/kg)を十分に下回ると考えられますが、さらなる濃度低減への策を講じるうえでは、各供給経路が海洋に及ぼす影響を解明することが重要です。

 そこで本研究では、福島・宮城両県の沿岸域を対象に、"各供給経路の137Cs流出濃度"と"海洋中137Cs濃度"の時系列データから、海洋中137Cs濃度に対する各経路の寄与率を推定しました。各経路から海洋に流出した137Csの希釈に基づき、両データ間の関係性を説明する数理モデルを構築し、2013~2016年における各経路の寄与率を導きました。

 その結果、海流などの影響により、原発の南側ほど直接漏洩の寄与が大きくなることが分かりました。また、福島第一原発近傍からの漏洩に加え、複数の河川が密集して注ぎ込む福島県沿岸域では、各経路とのわずかな位置関係の違いにより近接した観測地点でも各経路の寄与は大きく異なりました。その一方、宮城県沿岸域では、比較的距離が近い地点において、各経路の寄与率はほとんど差がないことが分かりました。

 本研究の成果は、濃度低減策の検討や、今後の海洋モニタリング計画の効率化への知見となります。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
羽田野 祐子 教授

筑波大学生命環境系
津旨 大輔 教授

高橋 勇旭 リスク・レジリエンス工学学位プログラム(博士前期課程)1年次

掲載論文

【題名】
Estimation of the Contribution Rates of Multiple 137Cs Source Pathways to the Ocean after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Accident
(福島第一原子力発電所事故後の海洋中137Csの各供給経路の寄与率推定)
【掲載誌】
Regional Studies in Marine Science
【DOI】
10.1016/j.rsma.2026.105272

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