生物・環境

長野県木曽地域のツキノワグマの遺伝的多様性と遺伝構造を解析

研究イメージ画像
(Image by Sanit Fuangnakhon/Shutterstock)
 長野県木曽地域を対象に、ツキノワグマの体毛から抽出したDNAを用いて、その遺伝的多様性および遺伝構造を調べました。その結果、遺伝的多様性の重要な指標となる有効な集団サイズは大きくないと考えられ、今後の継続的な遺伝的多様性モニタリングの必要性が示唆されました。

 人間とツキノワグマ(以下、クマ)とのあつれきは、目下、日本社会の大きな問題となっています。クマ保護管理策を提案するには、クマが各地域でどのように集団を形成し、集団間や個体間で移動あるいは遺伝的交流をもっているのかなど、生態遺伝学的特徴の深い理解が不可欠です。

 本研究では、長野県木曽地域の約48km2の調査区に35個の体毛採取トラップを設置し、収集したクマ体毛からDNAを抽出して、母性遺伝するミトコンドリアDNAの塩基配列多型および両性遺伝する核DNAの遺伝子型の決定と性判別を行いました。その結果、収集したサンプルから30個体のクマを識別し、雌雄で分布場所が異なる傾向があることが分かりました。ミトコンドリアDNAの解析の結果、雄の全個体はハプロタイプ(ミトコンドリアDNA型)E01のみを示す一方、雌はこれまで東北地方や富山県で報告のあったE07を含む3つのハプロタイプを保有していました。遺伝的多様性の重要な指標となる有効な集団サイズは大きくないと考えられ、今後の継続的な遺伝的多様性モニタリングの必要性が示唆されました。

 本研究は、長野県におけるツキノワグマの遺伝構造を初めて明らかにしたもので、実際のクマ保護管理への活用が期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
津田 吉晃 准教授

小井土 凜々子 研究当時:生物学学位プログラム(博士後期課程)
(現:京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所 特定助教)

長野県環境保全研究所
黒江 美紗子 研究員

掲載論文

【題名】
Local genetic diversity and structure of Asian black bear, Ursus thibetanus, populations in Nagano, Japan
(長野県に生息するツキノワグマUrsus thibetanus 集団の地域的な遺伝的多様性と遺伝構造)
【掲載誌】
Mammal Study
【DOI】
10.3106/ms2025-0029

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