医療・健康

不安で眠れないとき、脳では何が起きているのか

201706281400-700x394.jpg

Image by Stokkete/Shutterstock



国立大学法人筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS) 櫻井武副機構長/教授と金沢大学医学類の小谷将太(学部学生)らの研究グループは、マウスを用いた一連の実験により、恐怖や不安に関与する脳の領域、分界条床核*1に存在するGABA作動性ニューロン*2を特異的に興奮させると、ノンレム睡眠をしていたマウスが直ちに覚醒することを明らかにしました。また、同じニューロンを持続的に興奮させたところ、覚醒時間が延長され、ノンレム睡眠・レム睡眠両方が減少しました。さらに、前者の反応は、覚醒を司ることが知られているオレキシン系の作用を介していないのに対し、後者はオレキシンの作用によることを確認しました。 睡眠覚醒の状態は、生体内外のさまざまな要因や環境の影響を受けて変化します。不安などの情動*3は覚醒に影響し、不眠症の原因となることがよく知られていますが、その背景にある神経科学的なメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。 今回、情動と覚醒をつなぐメカニズムの一部が解明されたことにより、不安障害や不眠症などに効果のある新たな医薬品の開発につながることが期待されます。



図1 今回の研究で使用された実験方法 GABA作動性ニューロンに発現させたタンパク質チャネルロドプシンに光を当ててニューロンを興奮させると、ノンレム睡眠から直ちに覚醒する。




図2 不安に関与する分界条床核GABA作動性ニューロンの機能が高まると不眠が生じる

PDF資料

プレスリリース
創基151年筑波大学開学50周年記念事業