医療・健康

生殖細胞が作られる過程で細胞分裂サイクルが停止する機構を解明

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター(TARA) 森田俊平 研究員(研究当時、現 米国ブラウン大学・博士研究員)、太田龍馬 研究員、林 誠 助教および小林 悟 教授は、生殖細胞の形成過程において細胞分裂サイクルを停止させる機構を明らかにしました。 生殖細胞(卵や精子)は、発生初期に形成される始原生殖細胞に由来します。ショウジョウバエの始原生殖細胞は、その細胞分裂サイクルを停止していることが知られていますが、その詳細な機構はわかっていませんでした。本研究では、形成直後の始原生殖細胞において、miR-10404と呼ばれるマイクロRNAの合成が抑えられ、それにより、始原生殖細胞の細胞分裂サイクルを停止させる働きを持つ、dacapo (dap)と呼ばれる遺伝子が活性化していることを明らかにしました。さらに、始原生殖細胞の細胞分裂サイクルを強制的に開始させると、生殖細胞形成過程が正常に進行できなくなることも発見しました。このことは、細胞分裂サイクルの停止が、ショウジョウバエの生殖細胞形成過程において重要な役割を果たしていることを示しています。細胞分裂サイクル停止は多くの動物に共通する生殖細胞形成過程の特徴の1つであり、本研究の成果は、他の動物においても同様の機構を明らかにする糸口となることが期待されます。



図 始原生殖細胞の細胞分裂サイクルにおけるpgc遺伝子の働き

(左図)pgc遺伝子が働いていると、nos遺伝子の活性化と、miR-10404合成抑制に伴うdap遺伝子の活性化により、細胞分裂サイクルのうち、G2期からM期、およびG1期からS期への移行が阻害され、細胞分裂サイクルが停止する。
(右図)pgc遺伝子の機能を欠くと、nos遺伝子が働かず、また、miR-10404が合成されてdap遺伝子を抑制するため、細胞分裂サイクルが停止せず、生殖細胞形成に異常が生じる。

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筑波大学生存ダイナミクス研究センター(TARA)

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