医療・健康

脳内の免疫系情報伝達分子が攻撃行動の個体差に影響を及ぼす

研究イメージ画像 (Image by Victor Tyakht/Shutterstock)


攻撃行動は、なわばりを守ったり、餌や交尾相手を獲得するために、多くの動物が示す行動である一方、大きな個体差が存在することも知られています。雄マウスの中にも、なわばりを守るための攻撃行動を適切に示す個体(攻撃個体)と、全く示さない個体(非攻撃個体)が存在します。このような攻撃性の個体差はなぜ生じるのでしょうか。


本研究では、雄マウスを用いて、免疫系の情報伝達分子であるサイトカインの一つ、インターロイキン1β(IL-1β)が、背側縫線核という脳領域に作用し、攻撃行動の個体差に影響を及ぼしていることを明らかにしました。まず、非攻撃個体は、脳内セロトニンの神経核である背側縫線核において、攻撃個体よりもIL-1βの量が多いことが分かりました。さらに調べたところ、他の脳領域や、末梢血中のサイトカイン量は、攻撃個体と非攻撃個体の間に差はなく、背側縫線核にIL-1βが作用することで攻撃行動が抑制されていることが示されました。また、非攻撃個体で増加していたIL-1βは、背側縫線核にあるミクログリアから産生されており、それが背側縫線核のセロトニンニューロンの活性を抑制し、攻撃行動に影響を与えていることが明らかになりました。


IL-1βは病気の時に特徴的な発熱や、活動性、意欲の低下などに関与することが知られている炎症性サイトカインです。近年、免疫系と精神疾患の関係が徐々に明らかになってきており、動物の行動の個体差を生み出す脳内メカニズムの解明は、その新たな治療方法の開発にも寄与しうると考えられます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学人間系
高橋 阿貴 准教授

関連リンク

人間系
創基151年筑波大学開学50周年記念事業