医療・健康

難治性筋原線維性ミオパチーの病態メカニズムを解明

研究イメージ画像 (Image by Explode/Shutterstock)


筋原線維性ミオパチーは、筋原線維のZ帯と呼ばれる部位に存在するタンパク質の異常によって起こる疾患で、全身の筋力の低下し、心電動障害、心筋症、呼吸障害を併発しますが、有効な治療法はありません。一方、心筋細胞や骨格筋細胞のZ帯に多く存在するタンパク質BAG3は、機械的ストレスに反応して、タンパク質の合成と分解を調節しています。ヒトでは、このBAG3に1塩基の変異があると、小児期の重篤な拘束型心筋症、筋ジストロフィー、呼吸不全、末梢神経障害などを引き起こし、発症から10年以内に高い致死率を持つことが知られています。しかし、筋原線維性ミオパチーについては、発症や進行のメカニズムはよく分かっていませんでした。


本研究では、新たにヒトBAG3点変異遺伝子を過剰発現するマウスを作製し、ヒト患者の典型的な特徴を示すマウスモデルを樹立することに、世界で初めて成功しました。また、このマウスを用いて、BAG3変異による筋原線維性ミオパチーの病態メカニズムを解明しました。


このマウスを調べたところ、筋細胞のZ帯が崩壊し、細胞内にタンパク質の凝集体が見られました。その結果、大規模な線維化が起こり、早期に重度の拘束型心筋症を発症することが分かりました。また心筋細胞では、タンパク質が変異し、細胞内を正常に保つためのオートファジー関連因子の増加・蓄積が生じていました。さらに、この変異タンパク質の発現を制限すると、正常な心機能を維持できることを明らかにしました。このような病態メカニズムの解明は、新たな治療法の開発につながると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生存ダイナミクス研究センター(研究当時はドイツ ボン大学)
木村 健一 助教

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