医療・健康

免疫チェックポイントとそのリガンドの働きは皮膚疾患の炎症反応タイプにより異なる

研究イメージ画像 (Image by Alpha Tauri 3D Graphics/Shutterstock)


 がんの治療に、免疫チェックポイント(PD-1)や、そのリガンドの一つPD-L1に対する阻害抗体医薬品が登場し、これまでにない良好な成績を挙げています。一方で、これらのがん免疫療法では、免疫が活性化することによって生じる、特有の免疫関連副作用が問題になっています。特に皮膚に発症する頻度は高く、さまざまなタイプの皮膚疾患が、がん治療の妨げになります。


 本研究では、皮膚疾患の炎症反応タイプを、免疫細胞Th1、Th2、Th17に注目して、Th1反応の接触過敏反応、Th2反応のアトピー性皮膚炎、Th17反応の乾癬様皮膚炎の3つに分類し、PD-1に結合してシグナル伝達を行う代表的な2つのリガンドPD-L1とPD-L2のそれぞれの関与を分析しました。その結果、PD-L1シグナルを欠くマウスに惹起したそれぞれの皮膚炎では、Th1反応の接触過敏反応とTh17反応の乾癬様皮膚炎は増強されるものの、Th2反応のアトピー性皮膚炎の増強は認められず、PD-L2シグナルを欠くマウスでは、Th2反応のアトピー性皮膚炎のみ増強されました。


 これにより、PD-1もしくはPD-L1阻害療法下では、Th1反応に分類される扁平苔癬やStevens-Jonson症候群、Th17反応に分類される乾癬様皮膚炎が起こりやすく、一方、少なくともPD-L1阻害療法であればTh2反応に分類されるアレルギー性疾患は惹起・悪化しにくいことが理論的に裏付けられました。炎症反応がTh1、Th2、Th17反応に分類されることは免疫疾患に共通のストラテジーであり、本研究結果は、他の臓器疾患も含めた基礎疾患のある患者へのがん免疫療法施行時の、免疫関連副作用の管理に役立つことが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
沖山 奈緒子 講師

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