医療・健康

睡眠中の脳のリフレッシュ機構を解明

研究イメージ画像 (Image by Bilanol/Shutterstock)


 私たちヒトを含む哺乳類の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠という2つの状態から構成され、レム睡眠中には夢が活発に生じます。これまで、ノンレム睡眠中のホルモン環境は、身体の回復に寄与することが示唆されてきましたが、レム睡眠の脳や体の回復への寄与は謎でした。


 脳に必要な血液中の酸素や栄養を送り届け、不要となった二酸化炭素や老廃物を回収する物質交換は、毛細血管を介して行われ、毛細血管の血流は脳の機能維持に重要です。本研究では、特殊な顕微鏡を用いて、マウスの脳内の微小環境を直接観察できる技術を確立し、睡眠中のマウスの脳における毛細血管中の赤血球の流れを観察しました。その結果、レム睡眠中に、大脳皮質の毛細血管への赤血球の流入量が大幅に増加していることが判明しました。このことから、レム睡眠中は大脳皮質で活発な物質交換が行われ、脳がリフレッシュされていると考えられます。成人のレム睡眠の割合には個人差がありますが、これが少ないとアルツハイマー病などの認知症などにかかるリスクが高まります。今回の結果を踏まえると、レム睡眠の不足が、レム睡眠中の大脳皮質での活発な物質交換を損ない、これが認知症の発症に関与している可能性があります。また、本研究では、レム睡眠中の毛細血管の血流上昇には、カフェインの標的物質でもあるアデノシン受容体が重要であることも分かりました。


 本研究成果は、認知症の発症に関するメカニズムの理解につながるとともに、レム睡眠を標的とした全く新しい治療法の開発にも貢献できると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
京都大学大学院医学研究科(兼任)
林 悠 教授

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国際統合睡眠医科学研究機構


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