医療・健康

神経炎症が増幅される新しいメカニズムを発見

研究イメージ画像 (Image by Kateryna Kon/Shutterstock)


 神経炎症は、自閉症やアルツハイマー病などに共通して見られる症状の一つで、グリア細胞(中枢神経系を構成する神経細胞以外の細胞)から分泌された炎症性サイトカインによって引き起こされます。最近、神経細胞やグリア細胞のオルガネラ(細胞内の小器官)の異常によっても誘導されることが分かってきましたが、神経炎症とオルガネラ異常の関係は不明な点が多く残されています。


 本研究では、神経炎症によって、異常なオルガネラである微小核が、海馬神経細胞で増加することを発見しました。まず、野生型の成体マウス脳を観察し、健康な状態でも、大脳皮質や海馬にわずかながら微小核が存在していることを見いだしました。そこで、脳内微小核の数や大きさを正確に定量するプログラムを開発し、解析を行いました。成体マウスに炎症誘導活性をもつリポ多糖(LPS)を投与して神経炎症を誘導すると、海馬周辺でグリア細胞の一つであるアストロサイトが活性化し、海馬神経細胞で微小核が増加しました。一方、培養した海馬神経細胞では、LPSなどの炎症誘導刺激で微小核は形成されませんでした。従って、LPSは直接神経細胞に作用するのではなく、神経細胞の周辺環境を変化させて神経炎症を誘導し、海馬神経細胞の微小核形成を促すことが示されました。がん細胞では微小核は炎症反応を亢進させることから、神経系でも同様の働きがある可能性が考えられます。


 本研究成果は、微小核を三次元的に解析する新しいツールを提供するとともに、神経炎症が関連した疾患の新しい治療戦略につながることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
鶴田 文憲 助教

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