医療・健康

描画動作のAI自動解析により言語を使わずに認知機能低下を検出するツールを開発

研究イメージ画像 (Image by Ysbrand Cosijn/Shutterstock)

 アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症において、認知機能の低下を検出し早期に診断を行うことは予防および治療のために重要です。認知機能低下の検出には、通常、専門家による認知機能検査が行われますが、世界的には、このような検査に基づいて適切な診断・治療を受けられる人は限定的です。また、こうした検査はさまざまな言語に翻訳されて利用されているものの、その結果の妥当性に関する国際的な比較はあまり行われていないのが現状です。


 そこで本研究では、言語による回答を必要としない、認知機能低下検出のための新しいツールを開発しました。このツールでは、高齢者がタブレット端末に描画したデータから、描画速度や静止時間、筆圧やペンの傾きを自動で分析し、AIを活用して認知機能低下の程度を推定します。これを用いて日本とアメリカの高齢者の認知機能を解析、比較した結果、認知機能の低下とともに描画速度のばらつきや静止時間が増加するといった傾向が、両国に共通して認められました。そこで、アメリカの高齢者から収集したデータを用いて認知機能レベルの推定モデルを構築し、日本の高齢者の描画データに適用したところ、従来の推定モデルよりも高い精度で、認知機能レベルを推定することに成功しました。


 言語に依存しない描画データを解析対象とすることで、国や地域に関わらず利用可能な認知機能の評価方法を示したのは、本研究が世界で初めてです。このようなツールは、世界的な問題である認知症の早期発見・早期介入対策の一助となると期待されます。


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研究代表者

筑波大学 医学医療系
新井 哲明 教授

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