医療・健康

異なる種類の認知症を発話音声で見分ける〜音声自動解析による鑑別診断支援ツールを開発〜

研究イメージ画像 (Image by PopTika/Shutterstock)

 認知症はその原因疾患によっていくつかの種類があり、適切なケアのためには、原因疾患を特定する鑑別診断が不可欠です。特に、認知症の過半数を占めるアルツハイマー型認知症と、これに次いで多いレビー小体病型認知症は、臨床症状に多くの類似点があり鑑別は容易ではありません。しかし、鑑別診断に有効とされるバイオマーカー検査は高額あるいは侵襲性を伴うという課題があります。


 本研究では、モバイルアプリ上で、5つの課題に対する回答を音声で収集、解析することで、これら2つの認知症の鑑別を支援するツールを開発しました。5つの課題は認知機能検査を元にしており、写真を言葉で説明する課題や、動物の名前をできるだけ多く挙げる課題などが含まれます。回答音声の言語的特徴(何を話したか)と音響韻律的特徴(どのように話したか)を健常例と比較したところ、アルツハイマー型認知症では語彙力低下などの言語的特徴における変化が、レビー小体病型認知症では発話速度の低下などの音響韻律的特徴における変化が顕著であることを発見しました。また、機械学習技術を用いて、回答音声データから2つの認知症を高精度に検出・鑑別できることを示しました。


 本研究は、発話音声の自動解析を通じて、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症が、言語的・音響韻律的特徴において異なるプロファイルを持つこと、また、それが鑑別支援に応用可能であることを世界で初めて示しました。この成果は、簡便な鑑別診断支援ツールとして、原因疾患に応じた認知症の早期診断・早期介入の一助となることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
新井 哲明 教授

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