医療・健康

慢性心不全を心筋ダイレクトリプログラミングで改善〜新しい心臓再生医療に向けて〜

研究イメージ画像 (Image by mi_viri/Shutterstock)

 心臓を構成する心筋細胞は再生能力が乏しく、心機能が著しく低下した心不全の根治療法は、心臓移植しかありませんが、ドナー不足などの問題により、十分な治療の提供は困難です。また、iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた再生医療が注目されていますが、これにも、腫瘍形成の可能性、組織生着率や治療効果の低さ、といった課題があります。


 本研究グループは、これらの課題を解決し得る方法として、幹細胞を用いずに心臓線維芽細胞から直接心筋細胞を誘導する「心筋ダイレクトリプログラミング法」を開発し、急性心筋梗塞マウスの心臓再生に成功しています。しかしながらこれまで、有効な治療法のない心筋梗塞の慢性期にもこの方法が適用できるかは不明でした。そこで本研究では、まず、心筋リプログラミング遺伝子の発現を薬剤投与によって自由に制御できる新しい遺伝子改変マウスを開発し、心筋ダイレクトリプログラミングを行いました。その結果、心筋梗塞慢性期の線維芽細胞から心筋細胞が再生し、心機能が改善することを世界で初めて明らかにしました。さらに、線維化(組織が硬くなる)に関与する遺伝子を高発現する悪玉心臓線維芽細胞が、同遺伝子発現の低い善玉線維芽細胞に変化して、梗塞巣(心筋細胞が壊死した範囲)が退縮することも見出しました。


 本研究により、心筋ダイレクトリプログラミングは、心臓線維芽細胞からの心筋再生と、線維芽細胞の善玉化を介した抗線維化作用の両面で、心筋梗塞慢性期の心不全を改善させることが明らかになりました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
家田 真樹 教授

慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)
福田 恵一 教授

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