医療・健康

教育プログラムで医学生は健康と社会の関係をより深く理解できる

研究イメージ画像 (Image by BearFotos/Shutterstock)

 人の健康はさまざまな社会的、経済的要因と複雑に絡み合っています。健康に影響を及ぼす社会的要因は健康の社会的決定要因(SDH)と呼ばれ、最近では医学生への教育でも注目されています。SDHは各要素が複雑に影響しあうため、より深く理解するにはリフレクション(省察)が重要となります。しかし、どのような教育により医学生のSDHへの理解を深められるかを継続的に評価した報告はほとんどないのが現状です。


 筑波大学医学類では、2018年から医学生を対象に、地域医療実習においてSDH教育プログラムを導入しました。このプログラムは医学5・6年次学生の必修で、4週間にわたり、大学病院や郊外の病院・診療所での実習を行います。初日にSDHに関するレクチャーを受け、4週間の実習中にSDHに関連した事例を見つけて最終日に発表するよう指示され、実習終了後にレポートを提出します。プログラムは随時、内容の充実を図り、指導する教員に対してもSDH教育への理解を深める取り組みを行っています。


 本研究では、2018年から3年間の学生レポートを分析し、SDHへの理解のレベルを評価しました。その結果、プログラム導入当初よりもSDHをより深く理解している学生の割合が増加し、SDHのさまざまな要素に注目できるようになったことが分かりました。


 医学生へのSDH教育プログラムは、今後より注目されることが期待されており、さらなる発展のためには、現在よりもさらに医学と社会科学とを統合させる教育が必要だと考えられます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
小曽根 早知子 講師

春田 淳志 客員准教授/慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター 教授

掲載論文

【題名】
Three-year evaluation of a program teaching social determinants of health in community-based medical education: a general inductive approach for qualitative data analysis
(地域基盤型医学教育における健康の社会的決定要因教育プログラムの3年間の評価)
【掲載誌】
BMC Medical Education
【DOI】
10.1186/s12909-023-04320-2

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