医療・健康

eスポーツの長時間プレーに伴う自覚しにくい認知疲労を瞳孔収縮から検知

研究イメージ画像
(Image by Parilov/Shutterstock)
 疲労には過活動から人間の心身を守る働きがあります。しかし、主に身体ではなく頭脳の活動であるeスポーツでは、疲労の自覚(疲労感の高まり)が遅れて認知疲労(判断力低下)と乖離してしまうことが分かりました。また、瞳の大きさが認知疲労の指標となる可能性が示されました。

 長時間の身体的・精神的活動時には、主観的な疲労感の高まりとともに、一過的な肉体疲労(筋力低下)や認知疲労(判断力低下)が起こります。疲労感は、克服したいものである一方、心身の過活動を防ぐ大切な役割を持ちます。しかし、eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)に代表されるような、主にサイバー空間で行われる頭脳活動時の疲労感の働きはよく分かっていませんでした。


 運動時の疲労感の高まりには身体運動に由来する種々の因子が関わることから、本研究では、ダイナミックな身体活動を伴わないeスポーツにおいては、プレー経験によらず、長時間プレーは疲労感が高まる前に認知疲労を生じさせてしまうという仮説を立てました。この仮説を検証するため、eスポーツにバーチャルサッカーを用い、脳活動の間接指標として注目される瞳孔径をアイトラッカーにより測定し、3時間の連続的なプレーが疲労感と認知疲労に及ぼす影響を検討しました。


 その結果、プレー経験に関わらず、疲労感は、プレー開始の2時間後までは全く変化せず、3時間後に微増しましたが、認知疲労との関係は見られませんでした。一方、瞳孔径は、2時間後と3時間後に減少し、認知疲労と関連していました。


 これらの結果は、仮説の通り、プレー経験の多寡によらず、eスポーツの長時間プレー時の疲労感と認知疲労との間には明確な乖離があり、認知疲労の自覚が難しいことを示しています。また、瞳孔の収縮は、頭脳活動による認知疲労を検知し、自覚を助ける神経マーカーとして役立つと期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学体育系
松井 崇 助教
髙橋 史穏(体育科学学位プログラム博士後期課程)

掲載論文

【題名】
Cognitive decline with pupil constriction independent of subjective fatigue during prolonged esports across player expertise levels.
(プレーヤーの専門性を超えて長時間のeスポーツ時に主観的疲労と関係なく瞳孔収縮とともに生じる認知機能低下)
【掲載誌】
Computers in Human Behavior
【DOI】
10.1016/j.chb.2024.108219

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