医療・健康

AI技術で重なり合った細胞膜を正確に識別・定量する新手法を開発

研究イメージ画像
 顕微鏡画像上で重なり合って見える細胞膜を、AI技術を用いて個別に識別し、その形状を正確に定量する新たな手法「DeMemSeg」を開発しました。本手法はこれまで困難であった細胞形態の定量的解析を自動化・高速化するもので、細胞の仕組みの解明や関連疾患の研究を加速させることが期待されます。

 細胞やその内部にある細胞小器官(オルガネラ)の「形」は、その機能と密接に関連しており、生命現象を解明する上で形の変化を正確に捉えることは極めて重要です。そのための手法として、3次元蛍光顕微鏡で得られたデータを2次元画像に投影した分析がしばしば行われますが、この過程で、立体的に分離している構造同士が画像上では重なり合ってしまい、個々の輪郭を正確に識別することが困難でした。

 本研究では、この課題を解決するため、出芽酵母の胞子形成時に作られる複雑な細胞膜(前胞子膜)をモデルシステムとして、AI(人工知能による深層学習)技術を活用した新たな画像解析手法「DeMemSeg」を開発しました。DeMemSegは、専門家による手作業での解析と統計的に区別がつかないレベルの極めて高い精度で、重なり合った膜構造を自動で個別に識別できます。さらに、DeMemSegが学習していない細胞膜の形態異常を持つ変異細胞を解析させたところ、その特徴的な形態異常を正確に検出し、定量化できることも実証しました。

 本手法は、まず出芽酵母の研究分野において、これまで困難であった大規模な形態情報の客観的かつ定量的な解析を可能にします。さらに、DeMemSegに用いられたアプローチやワークフローは、他のさまざまな生命科学研究へ応用できると考えられます。ヒトの配偶子の形成や受精に関わる疾患の中には、細胞やオルガネラの形態異常が関与するものがあり、本研究成果はこれらの疾患の病態理解に貢献する基盤技術となると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
須田 恭之 准教授
田口 将大(ヒューマニクス学位プログラム5年)

掲載論文

【題名】
Deep Learning-Based Segmentation of 2D Projection-Derived Overlapping Prospore Membrane in Yeast
(深層学習を用いた、2次元投影により生じた重なり合う出芽酵母前胞子膜のセグメンテーション)
【掲載誌】
Cell Structure and Function
【DOI】
10.1247/csf.25032

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