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報酬・嫌悪学習が細胞外スルファターゼにより制御される仕組みを解明

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(Image by BurAnd/Shutterstock)
 報酬学習と嫌悪学習の両方において、細胞外でヘパラン硫酸(さまざまな生理機能を調節する糖鎖)の硫酸基を除去する酵素「スルファターゼ1(Sulf1)」が必要なこと、また、これらの学習に重要なドーパミン神経回路をSulf1が調節していることを、マウスを用いた行動実験により明らかにしました。

 ある行動の結果として報酬(好ましい結果)や嫌悪(好ましくない結果)が得られることを学習し、その行動を強化する報酬学習や嫌悪学習には、大脳基底核の一部である側坐核が関与しています。一方、細胞外スルファターゼ(Sulf1とSulf2)は、ヘパラン硫酸糖鎖の硫酸基を分解することによりさまざまな細胞機能を調節する酵素ですが、これらについての研究の多くは発生とがん化に関するもので、成体脳機能との関わりはよく分かっていませんでした。本研究グループはこれまでに、Sulf1遺伝子が成体マウスの脳、とりわけ側坐核や前頭皮質などに強く発現していることを見いだしており、今回、側坐核におけるSulf1遺伝子の役割を調べました。

 本研究では、Sulf1遺伝子を破壊したノックアウトマウスを用いて行動実験を行ったところ、報酬学習も嫌悪学習も低下していることが分かりました。さらに、ドーパミンD1受容体を発現する細胞(D1細胞)とドーパミンD2受容体を発現する細胞(D2細胞)で別々にSulf1遺伝子をノックアウトしたマウスで同様の行動実験を行なったところ、D1細胞でSulf1遺伝子をノックアウトすると報酬学習が低下し、D2細胞でSulf1遺伝子をノックアウトすると嫌悪学習が低下しました。これらの結果から、Sulf1は、報酬学習と嫌悪学習の両方に必要であり、D1細胞とD2細胞の両方の神経回路の調節に関わっていることが明らかになるとともに、Sulf1が発生期のみならず成体脳の機能に関与することが示されました。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
桝 正幸 教授

大阪大学蛋白質研究所
疋田 貴俊 教授

掲載論文

【題名】
Essential roles of heparan sulfate endosulfatase Sulf1 in reward and aversion learning through distinct dopamine D1 and D2 receptor pathways in male mice
(ヘパラン硫酸エンドスルファターゼSulf1はドーパミンD1・D2受容体経路を介した報酬と嫌悪の学習に必要である)
【掲載誌】
Journal of Neurochemistry
【DOI】
10.1111/jnc.70338

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