医療・健康

威嚇するより攻撃してしまうマウスの神経回路を解明

研究イメージ画像
(Image by Sketched Images/Shutterstock)
 マウスは、なわばりを守る際、威嚇と攻撃をバランスよく示すことで、攻撃が必要以上に激しくなりすぎないように調整しています。本研究では、外側視床下部から背側縫線核へつながる神経回路の過活動により、このバランスが崩れ、攻撃だけが激しくなってしまうことを見いだしました。

 多くの動物にとって、なわばりを守るために攻撃行動を示すことは必要です。しかし、攻撃が激しくなりすぎると、互いにひどい怪我をしてしまう危険があります。そのため、いきなり噛みつくのではなく、自分の強さを誇示したり攻撃的な様子をみせる威嚇行動を示すことで、必要以上に攻撃が激しくなりすぎないように調整しています。マウスも、攻撃場面では噛みつき攻撃と威嚇行動をバランスよく組み合わせています。ところが、幼少期にストレスを受けたマウスでは、このバランスが崩れて、噛みつき攻撃だけが激しくなることが知られていました。そこで本研究では、攻撃と威嚇のバランスに関わる脳の仕組みを調べました。

 その結果、脳内の外側視床下部から背側縫線核への神経投射が、攻撃と威嚇のバランスの維持に関与することが明らかになりました。この神経投射の働きを強めると、威嚇は変わらないのに、噛みつき攻撃だけが増えて激しくなりました。逆に働きを弱めると、噛みつき攻撃だけが減りました。さらに、マウスはこの神経投射が活性化される行動を避けることが分かり、不快な状態と関係している可能性が示されました。

 私たち人間も、強いストレスを受けると怒りが強くなり、思わず攻撃的になってしまうことがあります。本研究は、このようなストレスや不快情動により攻撃が激しくなりすぎてしまう仕組みを理解する手掛かりになると期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学 人間系
高橋 阿貴 准教授
三井 鴻志郎 ニューロサイエンス学位プログラム

掲載論文

【題名】
Lateral hypothalamus-dorsal raphe nucleus projections modulate intraspecific attack behavior in male mice.
(外側視床下部―背側縫線核投射ニューロンは雄マウスの種内攻撃行動を調節する)
【掲載誌】
iScience
【DOI】
10.1016/j.isci.2026.115427

関連リンク

人間系
ニューロサイエンス学位プログラム