医療・健康
外言と内言では瞳の大きさが異なる
声に出す「外言(がいげん)」によって数を数える場合と、心の中で数える「内言(ないげん)」での瞳孔反応を比べたところ、外言では一貫して瞳孔が拡大する一方、内言での瞳孔反応は課題によって変わり、いずれも外言より小さいことを明らかにしました。頭の中の言葉は、声に出す言葉より覚醒状態が低いことを示しています。
私たちは、声に出さなくても頭の中で自分に語りかけたり、言葉を使って考えたりします。こうした頭の中の言葉は「内言」と呼ばれ、思考や自己制御を支えると考えられています。脳イメージング研究から、内言は声に出す言葉「外言」と共通する言語ネットワークを一部用いることが分かってきましたが、脳のどの部分が働くかに焦点が当てられてきたため、内言と外言で脳が同じ覚醒状態で働いているのかは分かっていませんでした。
そこで本研究チームは、脳の覚醒状態を秒単位で映し出し、発声中も非接触で計測できる瞳孔の大きさの変化に着目しました。健常な若年成人を対象に、安静(何も考えない)、外言(声に出して数える)、内言(心の中で数える)の3条件からなる数唱課題を用い、数え方の異なる三つの実験で瞳孔径の変化を調べました。その結果、外言では三つの実験の全てで瞳孔が拡大した一方、内言での瞳孔反応は課題によって縮小・不変・拡大と異なり、いずれの実験でも外言より小さいままでした。
これらの結果は、内言が「声に出さない小さな外言」ではなく、外言よりも覚醒状態が低い言語活動であることを示しており、内言研究に、脳の状態という新たな視点を加えるものです。本手法は、幼児期に頭の中の言葉が育つ過程の解明や、スポーツで自分を鼓舞したり落ち着かせたりする際の言葉の使い分けの理解につながることが期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学体育系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)桑水 隆多 助教
立命館大学OIC総合研究機構
渡部 綾一 助教
京都大学大学院文学研究科
森口 佑介 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Dissociable pupil-linked arousal during overt and inner speech
(外言と内言における瞳孔連動覚醒の乖離) - 【掲載誌】
- iScience
- 【DOI】
- 10.1016/j.isci.2026.117825