医療・健康
脳波から未治療者のうつ症状の重さを推定する手法を開発
うつ病の早期発見に役立つ、実用的かつ客観的な生理指標はありませんでしたが、脳波の「位相リセット」という現象に着目した新たな解析手法により、治療を受けていない人の幅広いうつ症状の重さを推定することに成功しました。うつ病の診断補助やスクリーニングなどへの応用が期待されます。
うつ病は早期に気付き、適切な支援や治療につなげることが重要です。症状の重さを客観的に測る方法として、比較的手軽に測定できる脳波の利用が期待されています。しかしながら現状では、脳波でうつ病患者と健常者を区別する手法は実用レベルではなく、未治療者の症状の重さを、軽い段階から重い段階まで連続的に推定することはさらに困難でした。
本研究では、うつ病の治療を受けていない成人276人の脳波を測定しました。そして、脳波の波のタイミングが急に変わる「位相リセット」という現象に着目し、脳のある場所で位相リセットが起きた後、別の場所での起こりやすさがどのように変化するかを解析しました。
その結果、複数の脳領域の組み合わせで見られるこの変化の特徴が、うつ症状の重さと関係することが分かりました。さらに、これらの特徴からうつ症状の重さを推定し、中程度以上の症状がある人と症状の少ない人を約80%の精度で区別することに成功しました。
本研究は、十分な人数を対象に、治療を受けていない人のうつ症状の重さを脳波から推定できることを初めて示した成果です。今後、別の集団でも検証を進めることで、うつ病の兆候を早期に捉えるスクリーニングや診断の補助、症状の変化の客観的な見守りなど、本手法の幅広い応用が期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学システム情報系森田 昌彦 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Distributed EEG phase-resetting dynamics predict depressive symptom severity in untreated adults.
(脳波位相リセットのダイナミクスによる未治療成人のうつ症状の重さの推定) - 【掲載誌】
- Nature Mental Health
- 【DOI】
- 10.1038/s44220-026-00757-8