社会・文化

ノーベル賞級の研究成果やイノベーションの創出を促す研究費配分を解明

研究イメージ画像 (Image by Panchenko Vladimir/Shutterstock)

 生命科学・医学分野に配分された1991年以降の科研費をすべて調べた結果、萌芽的トピックやノーベル賞級トピックの創出を促すには、受給する研究者にとっては、高額研究費を得るほど多くの成果を創出できる一方で、投資効率としては、少額研究費を多くの研究者に配る方が効果が高いことを見出しました。

 研究費は研究を進め新たな発見を導く大切な原動力です。基礎研究の分野では、公的機関が研究者に配分する研究費(日本においては、科学研究費助成事業:科研費)が大きなウエイトを占めています。一方で、研究費を配分する際、「少額の研究費を多くの研究者に配る」のと「高額の研究費を少数の特定の研究者に集中的に配る」のとで、どちらがより多くの新たな成果を生み出しイノベーションを導くか、また、ノーベル賞級の発見に結びつくのか、ということが世界的に議論されてきました。


 本研究では、生命科学・医学分野に配分された1991年以降の科研費すべてを対象に、研究費(金額や研究種目)と研究成果(発表論文数、萌芽的トピック創出数、ノーベル賞級トピック創出数)との関係を網羅的に調査しました。その結果、受給側の研究者にとっては、高額な研究費を得るほどより多くの研究成果を創出できるが、5000万円以上の高額金額帯になると、研究成果の創出が横ばい状態に達し、特にノーベル賞級のトピック創出数は研究費受給前よりも減少すること、また、研究費を投資する側から投資総額に対しての研究成果創出効率を見ると、500万円以下の少額研究費を多くの研究者に配る方が、より高額な研究費を限られた研究領域の限られた人数の研究者に配るよりも効果的であること、が明らかとなりました。


 本研究グループでは、これまでに、萌芽的トピックやノーベル賞級トピックの量的同定方法を確立し、それらの創出への研究者の関与を明らかにしており、今回の成果は、これらに続くものとして、わが国の研究政策や研究費行政に貢献する基盤的知見となると期待されます。



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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 医学医療系
大庭 良介 准教授

弘前大学 人文社会科学部
日比野 愛子 教授

掲載論文

【題名】
The effectiveness of Japanese public funding to generate emerging topics in life science and medicine.
(生命科学・医学分野における萌芽的トピック創出に対する科研費の費用対効果)
【掲載誌】
PLoS ONE
【DOI】
10.1371/journal.pone.0290077

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