社会・文化
他者から奪い取るという負の行動は第三者に対しても連鎖する
(Image by New Africa/Shutterstock)
梅谷 凌平 理工情報生命学術院システム情報工学研究群 博士後期課程
秋山 英三 システム情報系 教授
立正大学
山本 仁志 経営学部 教授
人は他の種と比較して、とても協力的な種とされています。実際に、人には、自分に協力してくれた相手に直接返報する「お返し」や、協力された人が見ず知らずの第三者に協力する「おすそ分け」などの行動があります。協力によって利益を与えた場合、相手からの協力的な返報が生まれる傾向がある一方で、裏切りによって損失を与えた場合には、その相手からの報復を誘発します。しかしながら、自分に損失を与えた相手に直接報復できない場合、見ず知らずの第三者からであっても、失った分を取り戻そうとするのか、また、そうした行動はどの程度連鎖するのか、といった定量的な分析は不足していました。
本研究では、この課題に対して定量的な検討を行いました。その結果、人は自分の持つ資源が奪われた場合、それが相手の意図的な行動であったかどうかに関わらず、第三者からであっても奪われた分と同じくらいの量を奪い取る傾向にあることが分かりました。
本研究グループはこれまでに、おすそ分けのような、第三者に対する協力の連鎖には行動の意図が重要な役割を果たしていることを明らかにしています。しかし今回の結果は、奪い取るというネガティブな行動に関しては、その行動の意図とは関係なく、第三者に連鎖することを示しました。
このようなネガティブな行動のメカニズムを知ることは、安定した協力社会の実現に貢献すると考えられます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学梅谷 凌平 理工情報生命学術院システム情報工学研究群 博士後期課程
秋山 英三 システム情報系 教授
立正大学
山本 仁志 経営学部 教授
掲載論文
- 【題名】
- Individuals reciprocate negative actions revealing negative upstream reciprocity.
(ネガティブな行動をとると負のアップストリーム互恵性が生じる) - 【掲載誌】
- PLoS ONE
- 【DOI】
- 10.1371/journal.pone.0288019