社会・文化

社会正義に基づく多文化間共修の実践は包括的な留学生支援につながる可能性がある

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(Image by Viktoria Kurpas/Shutterstock)
 包括的な留学生支援の実現を目指し、社会正義の視点を取り入れた新たな多文化間共修を大学で実践しました。その結果、留学生のエンパワメントや行動意欲の向上、日本人学生の特権性への気づきなどが確認され、企業など多様な関係者との協働による、持続可能な留学生支援の可能性が示されました。

 日本の大学に在籍する留学生は、言語や経済的な壁、日本人学生との関係づくりの難しさなど、さまざまな課題を抱えています。これまでの留学生支援は、留学生の困難やニーズへの対応が中心でしたが、キャンパス全体を国際化し、だれ一人取り残さない大学を実現するためには、包括的なアプローチが必要だと指摘されています。

 そこで本研究チームは、多様な文化的背景を持つ学生が交流し学び合う多文化間共修の実践に取り組みました。そして、その枠組みとして、米国の大学で発展してきたインターグループ・ダイアローグ(IGD)という社会正義に基づく教育に注目しました。社会正義とは、不平等や差別の構造に目を向け、公正な社会の実現を目指す理念のことを言います。

 具体的には、筑波大学とリシュモンジャパン合同会社の共同研究の一環として、多文化共生をテーマとして、IGDの考え方を多文化間共修に取り入れた「多文化IGD」ワークショップを2022年8月に2日間実施しました。留学生と日本人学生、同社の社員が参加し、1日目は、留学生や移民、海外経験のある日本人社員のケーススタディをもとに、かれらが直面している障壁について対話しました。2日目は、より包摂的な大学や職場をつくるためのアクションプランを共に考えました。このワークショップでは、議論ではなく対話を大切にし、安全な学び合いの場づくりを重視しました。

 その結果、留学生に対しては、ワークショップを通して自分の経験やアイデンティティを肯定されたことにより、エンパワメントの効果が確認されました。日本人学生においても、他者の視点に立って考え、自分の特権性に気づくなど、批判的意識の向上が見られました。また、自分の権利や考えを伝えようとする意欲を高めた学生もいました。「多文化IGD」は、多様な人が協働し、持続可能な留学生支援につながる新たな形を示しています。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学人間系
徳永 智子 准教授
河野 禎之 助教

掲載論文

【題名】
Developing Multicultural Intergroup Dialogue at a Japanese University: Toward Sustainable and Holistic International Student Support.
(日本の大学における多文化インターグループ・ダイアローグの構築―持続可能かつ包括的な留学生支援を目指して)
【掲載誌】
Journal of International Students
【DOI】
10.32674/wbf7bw59

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