福知山線脱線事故(2005年4月)の新たな原因論と予防策を提示
2005年4月に発生した福知山線脱線事故の原因を再検証するため、運転士が保持する知識構造をモデル化し、組織全体の振る舞いをシミュレーションしました。その結果、組織構成員の能力開発について誤った選択をしていたという組織マネジメントの失敗も、事故の原因であると結論づけました。
今から21年前の2005年4月25日にJR西日本福知山線脱線事故が発生しました。兵庫県尼崎市の福知山線塚口駅―尼崎駅間の線路の曲線部に、上り快速電車が制限速度を大幅に超える時速116キロで進入し、先頭車両から5両目車両までが脱線、先頭車両と2両目車両が進行方向左側のマンションに衝突しました。この事故で乗客106人と運転士1人が死亡しました。
この事故は、鉄道システムを構築する上で常識とされてきた「定められたルールに従って運転士が運転する」ことが破られたという面で、前例のない事故でした。
本研究では、事故から20年を機に、この事故のシステム的な原因は何か、そして同じメカニズムの事故を予防するための対応策は何かという問いに、学術的に答えることを目指しました。
本研究チームは、事故を巡るヒューマンエラー原因論や組織風土要因論に疑問を呈した上で、事業者が組織マネジメントに失敗したことが重要な一因であるとの仮説を立てました。そして、マネジメントの中でも、特にオペレーターの知識構造に働きかけるスキルマネジメントに着目し、曲線部における速度超過といった逸脱行動を予防する為に、どのようなスキルマネジメントが有効であるかを検証しました。具体的には、列車運転士(オペレーター)は複数階層を持つ知識構造のもとで業務を遂行する、と仮定したコンピュータ・シミュレーションを行いました.
その結果,オペレーター間の双方向コミュニケーションによるスキルマネジメントが、同じメカニズムの事故予防に最も有効であるという結論を得ました。この結果から、管理者主導で学ばせるトップダウン型のスキルマネジメントを事業者が採用していたことを、事故原因の一つとしてとらえる必要性が新たに示唆されました。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
山口 修司 リスク・レジリエンス工学学位プログラム(博士後期課程)3年次筑波大学システム情報系
伊藤 誠 教授
掲載論文
- 【題名】
- 福知山線脱線事故のシステム科学による再検証 −シェアードメンタルモデルによるシステム事故分析−
- 【掲載誌】
- 安全工学
- 【DOI】
- 10.18943/safety.65.1_35
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リスク・レジリエンス工学学位プログラムシステム情報系